急性期病院でのCV関連血流感染予防のための2022年更新ガイドライン
Buetti, Niccolò et al. “Strategies to Prevent Central Line-Associated Bloodstream Infections in Acute-Care Hospitals: 2022 Update.” Infection Control & Hospital Epidemiology 43.5 (2022): 553–569.
J-IVCARESより、感染予防に関する情報をお届けいたします。本日は「急性期病院における中心静脈カテーテル関連血流感染(CLABSI)予防のための2022年更新ガイドライン」をご紹介します。
CLABSI予防について悩んでいる方にとって、何を優先的に行うのが望ましいかを考える上でヒントになります。
このガイドラインは、SHEA(米国医療疫学会)、IDSA(米国感染症学会)、APIC(感染管理疫学専門家協会)、AHA(米国病院協会)、The Joint Commisionの協力によって策定され、急性期病院でCLABSI予防の実践的な推奨事項がまとめられています。
推奨事項
推奨事項は優先順位を考慮するために「必須の実践」と「追加のアプローチ」に分類されています。
1.すべての急性期病院で採用されるべき必須の実践(Essential Practices)
2.必須の実践によってCLABSIがコントロールされない場合に、病院の部署や集団で検討できる追加のアプローチ
(Additional Approaches)変更点の紹介
2022年版ガイドラインでは、2014年版からいくつかの重要な変更が加えられました。
1.必須の実践
(1)ICUにおける挿入部位の選択
集中治療室(ICU)における感染性の合併症を減らすために、鎖骨下静脈が中心静脈カテーテル(CVC)挿入において最も推奨される部位とされています。以前は、大腿静脈を避けることが示されていました。
(2)超音波ガイドの使用
カテーテル挿入時の超音波ガイドの使用がより強く推奨されています。これは、非感染性合併症のリスクを低減するための有効な手段とされています。ただし、この手順自体が無菌操作の厳格な遵守を危険にさらす危険性があります。
(3)クロルヘキシジン含有ドレッシングの使用
クロルヘキシジン含有ドレッシングが「必須の実践」として再分類されました。以前は、基本的な対策を実施してもCLABSI発生率が高い場合にのみ使用すべき特別なアプローチでした。
(4)輸液セットの交換頻度
血液製剤や脂質製剤を使用していない管理セットについては、交換頻度が最大で7日まで延長可能となりました。以前は4日以内とされていました。
2.追加のアプローチ
- CLABSI率が病院やユニットで設定した基準を上回っている場合:CLABSI率が依然として高い場合、必須の実践に加えて追加的アプローチを検討します。
- 高リスクの患者に対する対応:例えば、以前にCLABSIを繰り返している患者や、血管内装置が埋め込まれている患者(心臓弁や大動脈グラフトなど)など、感染のリスクが特に高い患者に対して追加的な予防措置を講じます。
- 必須の実践が実行されているが効果が不十分な場合:必須の実践を十分に実行してもCLABSIが制御できない場合、追加的な対策を取り入れることでリスクを減少させることが期待されます。
(1)長期CVCにおける抗菌ロック療法
薬剤耐性菌のリスクを考慮して、特にリスクの高い患者において限定した使用が推奨されています。また、抗菌ロック溶液を吸引することも示されています。
(2)抗菌含有キャップの使用
抗菌成分を含むキャップの使用が「追加的アプローチ」として推奨されていますが、手動での消毒と比べて優位性がないため、慎重な検討が必要です。
(3)輸液チームの活用
専門の輸液チームの活用がCLABSI予防において有効であるとされています。これにより、カテーテル管理の一貫性が確保され、感染リスクが減少します。ガイドラインでは、各病院がCLABSI予防のための取り組みを効果的に実施するための具体的な方法についても説明されています。
教育とトレーニング:すべての医療従事者に対して、カテーテルの挿入や管理に関する教育を行い、その知識と技術が適切であることを定期的に評価します。
サーベイランスと報告:ICUおよび非ICUでのCLABSI発生率を監視し、そのデータを定期的に関連部署に報告します。
詳細情報はこちらからご覧いただけます: https://doi.org/10.1017/ice.2022.87
今回は、主な変更点の紹介となっています。ガイドラインの全文には、CVC挿入前・中・後での推奨事項、教育や評価にも言及し、体系的にまとめられています。また、フリーで全文を読めるため、ぜひ一読することをおすすめします。
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