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現代を「鬼滅の刃」で読む(陸):無惨のパワハラ

鬼舞辻無惨のパワハラ会議はいっとき話題になったそうですね。パワハラをしている側は自覚がないということがこの問題を難しくします。(主観的に)正しいことをしているだけのようです。

パワハラをする側の辻褄はあっているわけです。彼の合理性に照らし合わせれば彼の言動のロジックに何の矛盾もない。

これも「認識のフレームワーク」の違いと言ってしまえばそれまでなのかもしれません。

ただし、途中のロジックが正しければ正しいほど、途中計算が正しければそれだけ、その出発点の違いは異なる価値に導くのでしょう。

鬼舞辻無惨(ワンマン社長)は、部下である下弦(平の取締役)の鬼が自分の期待にそぐわない働きしかしていないことを咎めます。

そして、一人の部下は自分の至らない働きぶりを詫び、次は必ず成果を上げて見せますと時間の猶予を願い出るのでした。それに対して無惨は次のように述べます。

無惨:「具体的にどれほどの猶予を?お前はどのような役に立てる?今のお前の力でどれほどのことができる?」

鬼舞辻無惨(ワンマン社長)は、部下のパフォーマンスとしての「やる気」ではなく、無惨の利益に対して具体的貢献と具体的見積を訊ねました。やる気なんて「レッドオーシャンだ」と。

すべての評価基準は「社長の目標達成の実現にどれほど貢献するか」であって、部下の気持ちや成長は関係ありません。

どこかの議員も同じようなことを申しておりました。

「私(が評価されるため)の仕事の邪魔をするな。このハゲー」と、それはまさに鬼の叫び声の様でした。

さらに、部下は言わないでも良いことを言ってしまいます。

自分は上司の役に立てると宣言した後で、上司の能力(兵隊、人脈、金)を分けてくれればとの条件を述べてしまいます。ここでは無惨の「血」です。

無惨:「なぜ私がお前の指図で血を与えねばならんのだ。はなはだ図々しい。身の程を弁えろ」

部下は「申し訳ありません。違うのです、そういう意味ではありません」と言ってしまいます。

無惨:「黙れ、何も違わない。私は何も間違えない。すべての決定権は私にあり、私の言うことは絶対である。お前に拒否する権利はない。私が正しいと言ったことが”正しい”のだ。お前は私に指図した。死に値する」

無惨のようなパーソナリティへの対応として、心理カウンセラーたちは対策はないので「とにかく逃げなさい」と助言することが多いようです。

この部下は実際「やばい」と思い、さっそく逃走を試みましたが、あっさりと無惨によって滅ぼされてしまいました。

自己中心的・自己愛的考えで、自分を特別であると信じるパーソナリティの者は、自分は常に正しいと考えるようです。組織的な事業の失敗が起こっても、自分以外の者が悪いのだと考えるのです。

一説によれば、幼少期の愛着形成に失敗し、心理的安全性が確保できなかった者は、周囲への共感・信頼感の構築が叶わず、自分自身を支えるものが自分の成功に限定され、それに執着するそうです。その詳細は私にもわかりません。

さて、取締役(下弦の鬼)たちが失敗した理由を社長(無惨)自ら説明しようとします。しかし、無惨はそれを言いかけてやめます。言っても始まらない。無駄だと。

無惨:だがもうそれもいい。私はお前たちに期待しない。

そして、部下である取締たちに言い放ちます。

無惨:貴様らの存在理由がわからなくなってきた。

そこで平の取締役が無惨を喜ばそうとして、事業の成功につながるかもしれないけれど未確定な情報を得意げに言います。

無惨:まだ確定していない情報を嬉々として伝えようとするな。

ぬか喜びになったら、お前たちは私のこの感情の波をどうしてくれるんだ。確定した情報のみ伝えよ。

無惨:私が嫌いなものは"変化”だ。状況の変化。肉体の変化。感情の変化。
無惨:私が好きなものは“不変”。完璧な状態で永遠に変わらないこと。

ん?「ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない」でスタンドのキラークイーンの使い手である吉良吉影もそんなことを言ったいたな、と思うのでした。

(コミック12巻他より)


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