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それでもセルサイドのM&Aアドバイザーの方が圧倒的に成功確率が高いという話

圧倒的にセルサイドの方がビジネスになりやすい

以前、M&Aはショートリスト先から買収する方が、成功確率が高いと話しましたが、案件としては、セルサイド(売却側)、バイサイド(買収側)の両方があるわけですが、逆説的ですが、FAとしては、圧倒的にセルサイドの方がビジネスになりやすいということがあります。

先ず、案件(業界では玉(ぎょく)といいます)を持っている方が、いろいろなところと交渉出来るわけで、当然成功確率が高くなります。

一方で、買収側は、ある意味子供がおもちゃを欲しがる様なもので、「そういう会社があったらいいですねえ」レベルの話なので、なかなかすぐに玉が出てくることはありませんし、実際に出てきても、いざその時ななったら、「やはりいらない」ということも結構あります。

ですから、ほとんどのFAはセルサイドFAとして、ディールをコントロールする立場が中心となります。
バイサイドFAになる場合は、既に買収者が買収対象発行体を見つけている時にだけ、デューディリジェンス、買収交渉を行います。

案件はセルサイドで買収者候補者にアプローチするところから始めると、クロージング(資金のデリバリー)までは、最低でも4か月かかり、長ければ6か月以上になることもありますね。

セルサイドFAは基本クローズド・ビッド(入札形式)が中心

セルサイドのFAはセラー(委託者)からアドバイザリー契約を締結するときにexclusive(排他的条項)を入れて、ほかのアドバイザーがその案件を持ち歩けないようにします。そうでないと、いろんなFAから同じ案件が持ち込まれ、案件のクオリティを劣化させたり、情報が錯綜してしまうからです。

FAは自分たちがこの案件の唯一のFAであることが、バイヤー候補先もしくはバイサイドFAに認知されて初めて、このディールのコントロールを行うことが出来ます。

クローズドビッド形式と申し上げましたが、セラーと契約を締結した後に、売却対象会社もしくは事業のヒアリング、スケジュール、フォーメーション(売却方法、株式譲渡、事業譲渡、会社分割など)、売却希望価格を盛り込んだインフォメーション・メモランダム(IM 案件概要書)を50ページ程度で作成し、それをバイヤー候補先もしくはバイサイドFAなど20社程度に2週間程度で説明を行い、興味のある候補先は、IMに記載されている締切日までに、買収希望価格、フォーメーション、それ以外の諸条件(キーマン条項、従業員雇用条件など)を記載した基本趣意書を提出していただく様にします。

基本趣意書の提出で本気度を見る

この基本趣意書はバイヤー側の角印または銀行印などが押されており、提示するにはそれなりに社内手続きが必要なものであり、バイヤー候補先の本気度を確認する意味を持っています。またこの段階で基本趣意書に記載されている買収希望価格はNon Bindingと言って、その価格に法的拘束力は無いように記載されています。なぜなら、そのあとのデューディリジェンスでほぼその金額よりは下がってしまうからですね。

そうなると、基本趣意書では金額を高く入れて、デューディリジェンスを行い、そのあとに金額を思い切り下げて来たり、若しくはデューディリジェンス後に二次入札には応じず、取引先との契約を把握した後で直接その取引先に営業をかけてくる場合が想定されますが、それはこのM&AのFAの業界はかなり狭いので、その様な紳士的でないバイヤー候補先や、FAはすぐにその噂が広まり、相手にされなくなりますので、ご注意ください。

デューディリジェンスは効率的に

こうして、仮に基本趣意書が5社ほど、提示されたとすると、セラーとmtgをした後、デューディリジェンスには3社ほど、参加してもらいます。1社だけにしないのは、その1社がデューディリジェンスをした後、買収しないという判断となった場合、また、入札をしなければならないのと、複数がデューディリジェンスに参加することで、バイヤー候補先に競争意識を持たせるためです。もちろん、デューディリジェンスに入っているバイヤー候補先にお互いのネームはブラインドにしておきますが、事業属性のみは伝えます。例えば、5社のうち、同業他社が2社、新規事業で検討しているところが2社、ファンドが1社などと言う様な開示をします。

デューディリジェンスは各社2〜3日程度で、セラーの会社にデータルームとして会議室を終日借りて、そこでビジネス、リーガル、アカウンティング、タックスに分かれ、適宜、弁護士、会計士、税理士が参加し、質問回答を行い、コピーを渡せるものは渡します。渡せないのは契約書のコピーと個人情報ですね。写真撮影も不可です。

その結果、2次入札を行い、今度は先方から基本合意書のドラフトを提示してもらいます。そのドラフトには最終契約のフレームとなるべき、条項と金額が記載され、ここからの金額は法的拘束力が発生します。

【お知らせ 本日18:00締切!】

8月20日、弊社代表の田中が、IPOの話をさせていただきます。

現在参加者87名。深く御礼申し上げます。




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