映画『ファーザー』
1ヶ月半ぶりの映画館。
前日にネットで予約したらもう9割席が埋まってて、当日はなんと満席。
主演男優賞獲ったからそうだよなぁとか思いつつ、左寄りの席しか取れなかった事に不満を抱きつつ、オープニングが始まった。
主演のアンソニー・ホプキンスは『羊たちの沈黙』でお目にかかってから忘れもしない人物で、人と彼のことを話すときも「レクター博士」呼びで話しちゃうぐらい大好きな役です。
まさかの役名もアンソニーだったんです...
意図したのかそうじゃないのか分からないですけど、このおかげでより物語に入り込めた気がします。
ここで少しあらすじを...
アンソニーは認知症のおじいちゃまで、娘のアンはそんな父に一人暮らしはさせられないと、自分のアパートメントに招き入れます。
娘が認知症の父と向き合うお話、そしてなによりアンソニー自身が認知症と共に生きていくお話です。
ストーリー展開が、認知症のアンソニー視点だったんですね。
なので、毎日どんどん知らない人が家に来る、昨日会った娘の夫が翌日まったく違う人になっている、チキンのおかわりでリビングを離れて戻るとディナー前に状況が戻っている、などSF映画かなとも思ってしまう展開になっています。ちょっと混乱しました。
わたしには軽度な認知症の祖母がいるので、認知症特有の時間をやたら気にする(腕時計が必須)様子には「あ、こういうのあるね」と納得しながら観れました。
でも、認知症本人があんなに混乱する日々を送っているなんて、不安とそれに伴う怒りに押しつぶされそうになっているなんて、思いもしませんでした。
最後に、アンソニーが看護師の前で本音を漏らして泣くシーンがあるのですが、もうとても悲しかったです。
わたしのおばあちゃんはどうなんだろう。
デイサービスに行く度に寂しさを感じているのかな。
何度も同じ事を聞いてしまうことに違和感を感じてしまっているのかな。
正常な自分と認知症の自分の狭間でなにか違和感や不安に悩まされときがあるのかな。
もう考えれば考えるほど涙が止まらなかったです。
今すぐおばあちゃんに会いたいと思いました。
少し落ち着いて、帰りの電車で「映画」として作品振り返ると、やっぱりアンソニー・ホプキンスがいてこその作品でした。
ストーリーや脚本、カメラワーク等はもちろん映画を評価する上で気にするところではあるけれど、一番は演者で決まるんじゃないかなと改めて思います。
レクター博士はあんなに繊細なおじいちゃまにもなれたんですね...
なんかレクター博士に会いたくなってきました...