ボーヤの話
ボーヤっていうのはローディの事で、多分合ってると思うんですけど、ようは師匠のお手伝いです。
当時O師匠のボーヤをちょいちょいやらせていただいてました。19歳から24歳くらいまでだったんで、もう20年以上前の話です。
アンプ運んだり。チューニングしたり。
当時O師匠はスピーカー2発のポリトーン、めちゃくちゃ重いやつですよ。でもすごくいいやつ。あれを運んでたんで、ステージが2階とか地下で階段がある店だとすごくたいへんだったんですよね。
思い出深いのは、後にサックスのレッスン受けたりするサックス仙人K師匠と、山田穣さんとO師匠が演奏するときにボーヤできたこと。
特に山田穣さんはですね、初めて生で聴いたのが、O師匠のボーヤの時だったと思うんですけど、まぁ見た目がカッコ良過ぎて。髪を切ったばかりの時だったと思うんですが、背も高くてモデルさんかと思いました。
で、すごく紳士的で良い人なんです。
でも、その時ギターで兄弟子のKさんて人も参加してたんですけど、その演奏に対しての興味のなさがハンパなくて、Kさんの演奏になると、端っこの方いって運指練習しちゃうんですよ。楽器はマーク6だったと思うんですけど、結構カチャカチャなるじゃないですか。ドキドキしちゃいましたよね。
えーって思ったけどその姿もまたかっこいいんですよね。
ステージ始まるまでも、休憩時間もずーっと練習してるんですよね。クラッシックのエチュードみたいなの。
とにかくストイックな人だなぁと思いました。
その後僕がギターを挫折してアルト始めたのは山田穣さんがかっこよかったのはかなり大きな影響があった気がします。
その日の録音(もちろんボーヤやってたのでご本人たちの許可取ってます)を実は今でも持っていてたまに聴くんですがall the things you areの演奏がO師匠も山田穣さんも、まぁキレキレですごく良い演奏されてます。
僕は今でもアルトでこの曲を吹く時はこの日の山田さんの演奏をどうしても意識した吹き方になってしまいます。
や、5億分の1も敵わない演奏ですが。
アルトってこんなに軽やかで、切なくて、悲しくていい音するのかーって思いましたよね。
実際僕がアルト始めたばかりの時はよく山田さんのライブに行って色々質問攻めしてました。口周りのこととか、運指のこととか。
クローゼのエチュードとか、サクソフォーン演奏技法(サックスの奏法に関しての理論書です)を教えてもらいました。
色々質問するとその場で教えてくれるんですが、例えばアルトのBbの音ってどうやって運指しますか?って質問したら、サイドキーも左手も両方使うけど、今はサイドキーばっかりになっちゃったから、カチャカチャカチャカチャ、ほら左手が下手になっちゃった、カチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャ、、、、そのまま練習に入ってしまわれる。
そんな人です。
とにかく、ストイックで実直で、真剣な人なんです。
音楽性も人柄もとても尊敬できる人です。
サックス仙人K師匠との演奏のときは、あんまりボーヤやった記憶がないですが、すげぇ普通の人っていう印象でしたね。
そうだ、当時髪長かったんでしたよね。一つに結いてて。
ただ楽器持つとまぁあの日本一な調子なんで、圧倒というか、、。音楽ってこんなに自由かね、と思いました。
譜割りがね、もうあんまり普通の八分音符吹かないですよね。
ジョーヘンダーソンみたいな感じに近いのかな。
後々レッスン受けた話はまた別に書こうかと思いますが、あの譜割りに関してはご本人曰く、言いたいことを詰め込んで言う、という演奏法だそうです。
あと、山田穣さんより、K師匠の方が年上ですが、K師匠がサラリーマンしてるとき、もう山田穣はデビューされていて非常に憧れた、年下なのにこんなことできる人がいるのか、自分がこんなことできるようになるとは到底思えなかった、とおっしゃってました。
山田さんはみんなのヒーローですね。
ちなみにK師匠はBbの運指は左手の人差し指のみです。これちょっと面白いところです。
めんどくさいじゃん、両手使うの。っておっしゃってました。
両手使うのめんどくさいから人差し指一本でできるように面倒くさい練習をずーっとカチャカチャやるんだよって、また仙人みたいなことを言ってました。
これ笑うところです。
ああいう別次元にいる人たちとほんの少しでも触れ合って、自分が凡人という事に気づけたのはとっても良かった事だと今は思ってます。