魚とサンショウウオ
魚とサンショウウオ
わたくしは昔、静かな小川に住む魚でありました。同じ魚の仲間はいませんでしたが、カエルとサンショウウオが友達でした。
ある日カエルとサンショウウオを見かけなくなりましたが、わたくしはひなたぼっこして暮らしておりました。温かい水流がすいすい体の横を通りました。
上を見あげると青色の水の中をこぽこぽと泡がのぼっていくのが見えました。
ぼんやりしているのが幸せでありました。
暖かくなってきて、サンショウウオが戻ってきたので嬉しくなってはねました。
そしてまたカエルが戻ってきてないことを思い出しました。カエルを知らないか、と問いかけました。
サンショウウオはカエルはまだ冬眠している、と言いました。夏になりました。秋になりました。冬になって、春になりました。
サンショウウオが春になって戻ってきたのでカエルを知らないか、と聞きました。サンショウウオはまだ起きてないようだと言いました。それは何年も続いていきました。
あたたかいところでひなたぼっこをしていると水流がすやすや通りました。サンショウウオがやってきたので「カエルは冬眠からさめないねぇ」と声をかけました。
カエルは最初の冬に死んでしまっていたのでした。それをサンショウウオも知っていたのでした。それを魚も知っていたのでした。
いつまでもカエルは冬眠していたのでした。
おしまい
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