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「物買ってくる、自分買ってくる。」    陶芸家・河井寛次郎


今週のことば
尾畑文正

 何を買ったか。そこに自分の人格が表れている。この上掲句を手がかりに「今」を考えたい。この夏の猛暑に誰もが閉口した。異常気象は能登半島で深刻な多重被災をもたらした。米国では過去最大のハリケーン被害が起こる。気候変動は二酸化炭素を排出する産業構造に関わる。自然から私たちの物欲生活が問われている。

 世界には戦争による民来の悲鳴が充満している。その実態は「強き者は弱きを伏す」(釈迦の言葉)である。武力で平和は生まれない。戦争の歴史を反省し、平和を誓った日本が、世界に警鐘を鳴らすのではなく、むしろ武力を強めている。まさに自然界からも歴史からも問われている。そのただ中で、この国の現在を決める総選挙が行われる。

 上掲句の意で言えば、選挙は誰かを選ぶ形で自分が何ものかを選ぶ。戦争する自分なのか。平和を望む自分なのか。選挙でどんな自分を私たちは表現するのだろうか。

(同朋大名誉教授)

<中日新聞コラムより>2024/10/27



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