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第1回ホームビデオをとろう

 まだ生まれてない我らの子(ツイッター通称は存在さん)に向けて、ビデオを撮ろう、という話になった。

「2022年10月8日。きみは今、ここにいます」
 夫とお腹を撫でながら、カメラに語りかけた。
 それだけで、ボロボロ泣けてきてしまった。ここのところ、存在さんのことになると、すぐたかぶって泣いてしまう。


 ちなみに会場はカラオケ。機材はさっき買った自撮り棒とスマホである。自撮り棒はぐねぐねしており、バネのようにブレちゃうシロモノだった。
 夫とは、実に三年ぶりのカラオケだった。


「えっ、メッセージ終わったら、ただのカラオケだと思ってた。歌もとるんだね。ふぃぎゅあっととか歌うつもりだったのに」
「歌ってもいいんだよ?」
「聞かせられるかよお」

 とりあえず、君が生まれる予定の年度の歌を歌ってみよう!とふたりで大好きなM八七を歌ってみたが、全然歌いこなせなかった。2022年のヒット曲を調べるも、どれもよく知らない。
「最近の曲は難しいねぇ……」
 そんなわけで、ふたりにとってのゆかりの曲と、青春時代の曲を歌うことになった。希望の曲を書き出し、再度、録画をスタートした。
 
 夫と私は9歳差。かなり歌のジャンルは合わなかった。それでもデュエットできた二曲。

 初めてふたりでカラオケに行った時、一緒に歌ったスピッツの空も飛べるはず。

 新婚旅行の帰りの車で、ウエディングソングをYouTubeで流したけどしっくりこなくて。ふたりでガヤガヤと歌ったモンゴル800の小さな恋の歌。

 そんな紹介を話してから歌い出す。


 かつて一緒にこれを歌った頃からは想像できなかったけれど、今、これから生まれくるこどものために歌っている。
 カメラの向こう側にまだ生まれてない子がいて、これを見ているような気がした。

 二曲、想いを巡らせながら歌うと、どちらも泣いてしまった。

「すぐ妻はエモくなるんだから。まぁ君(存在)が大きくなった頃に、エモいって言葉が残っているかは知らないけれど」
「ごめんね、両親は音痴だなぁって笑ってみてくれるといいな」
 べそべそとコメントを残した。

 残りの時間は、夫が愛する『ダイの大冒険』のbravest、夫の青春曲の天体観測。私の青春曲の君の知らない物語。他にもいろいろ。
 履歴の写真撮ればよかったのに、忘れてしまった。カラオケ慣れしてないなぁ。

 締め括りに、優しさに包まれたならを歌った。

「アニソンばっかりだったねえ」
「とりあえず第一回はこれにて」
としみじみしてから、第一回の存在さんへのメッセージビデオは終了した。

 この歌ったデータがちゃんと保存できて、存在さんが大きくなった頃に見せられたらいいな。恥ずかしいだろうけど。

 夜ご飯のチャーハンの具材をスーパーで買って帰った。
 

 いい土曜日だった。
 

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