ポー料理

観戦の楽しみ方

 ワールドカップ、そんなにのめり込まずに茫洋としてセネガル戦を観ていたあと、Twitterで見かけたツイートに気になるものがあった。
 セネガルのチームが連れてきた呪術師が(そりゃアフリカのチームにはいて当然だろ、と、ここには別に驚かなかったけど)、「日本チームには呪術が効きにくい」って言っていた、というやつだ。神社で必勝祈願とかしてるだろうし、確かに確かに。さすがにわかっているなあ、セネガルの呪術師。
 現世利益的な神頼みにかけては、二千年近くかけてシステムを練りに練って洗練されてきた国だからなあ。なまじな宗教より、よっぽどそっちのほうで対抗できそうな気がするよ。

 で、あまり乗り気でなかったワールドカップの観戦に(熱狂的なサッカー好きでもないですからね。むしろ渋谷の騒ぎなんかには眉をひそめる方です)、楽しみどころを見つけてしまった。
 WBCの時なんかにもやっているのだけれど、「対戦相手チームの国の料理を作って食べてしまい、勝ちを呼び込む呪術」と称し、普段はあまり知らない国の料理を食べながら観戦する、という楽しみ方。「食べて応援」ともいう。
 ただ今回はやる気は無く、「べつにいいか~」とコロンビアもセネガルもそんなことしなかったんだけども、ポーランド料理でも作ってみるか~と。

 でも思いついたのは、試合開始の数分前である。
 時間のかかる料理は作れない。材料も手に入るかわからない。
 ネットで調べてみた結果、「シレチ・ポ・ヤポンスク」ならいけるかも……と思った。日本の名を冠したポーランド料理なのがいいよね。「カズノコ好きなことが、日本人はニシンと卵が好きだ、と誤って伝わったため」というのも楽しい。
 12時までやっているスーパーに駆け込んでみたが、酢漬けのニシンがなかった。ニシン漬けぐらいあるかなあと思ったが、ないものだなあ。あれ好きなのに。あれがあれば、酸っぱいニシンとキャベツなんだから、ザワークラウトだと思えば東欧的なノリにもなるのに……と。北海道だけでなく、ここらでも漬け物のコーナーに普通に売ってて欲しいものだ。
 しかたなく魚売り場も調べてみたが、こちらにも〆鯖しかない。
 だめか……。
 呪術に必要な材料を集められず、日本は負けてしまうのかっ。
 いや、俺の戦いはまだ終わっていない!
 あきらめたらそこで試合終了とか言うじゃないか。
 たとえ材料が揃わなくても、代用品でなんとかできるはずだ。
 そう思って探した結果、「塩焼きニシン」をお総菜コーナーで発見。これで代用することにする。
 酢漬けも塩焼きも、結局のところ生ニシンのタンパク質を変成させたものであることに変わりない。酢はあとから加えても呪術的にはOKなはずだ。知らんけど。たぶん。

 というわけで、急いで帰って、塩焼きニシンを軽くほぐして酢に漬ける。呪術的には、これでも「酢漬けニシン」にはちがいない。調理的にも、酢によって、きつかった塩気が洗われて良い感じになっていた。
 その間に卵を茹でて、野菜を切って、人参サラダも作り……。
 とやっている間に試合は進んでいく。
 0-0のまま前半が終わったぐらいに、ようやくゆで卵ができたので、パパッと和えて盛りつけたのが、これ。

 けっこう美味しくて、味わいながら食べていたら、食べ終わる前に1点入れられてしまい「うおおおっ!」となる。
 しまった! 呪術的に間違っていたのか? 不利を呼び込んだか?(※この手のバカな言動は、観戦を楽しんでいる証拠ですのでご勘弁を)
 焦って、完食する。
 それでも日本の攻撃はなかなか決まらない。
 このままだと負けてしまう!?
 でも、ここでコロンビアが1点入れたとの情報が入ってくる。このまま、セネガルが負けると、日本がトーナメントに進めるらしい。
 なんと!
 対セネガル用の呪術は用意していなかった……!
 いやまて、クスクスなら家にあるぞ。
 セネガルでは、クスクスに牛乳かけて食べたりするらしい。
 ならば……というわけで、面倒だから大急ぎで牛乳でクスクスを炊いてみた。呪術的には(以下略)。

 砂糖を入れて牛乳で炊いたら、ちょっとデザート風になって美味かった。シナモンでも入れればよかったなあ。

 などとやっている間に、ブーイングの中をポーランドも日本もパス回ししての時間稼ぎが続き、セネガルは得点できず、双方の試合が終了。
 試合内容的にはなんだかしまらない展開となったが、トーナメントに進出できることに。よしよし、だったら呪術的には(以下略)。
 代用品だったり、仕込みが遅かったりしたせいで、内容がしまらなかったのだろう──とか、呪術師的な言い訳もできるぞ。

 ……という楽しみ方。

 トーナメント戦でも、リアルタイムで観戦できそうならやってみるかな。 対戦相手はベルギーかイングランドか。
 さて何を作ろうかな。


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