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セルバンでのカナンRPGセッションの一部分を伝承風にしてみる

 mixiの日記では、ざっくりした展開をレポート風にまとめてみました
 あえてバカ話風にしてみたわけですが、実際のところはプレイ中もみんなして笑いが絶えない楽しいものでした。
 しかし、TRPGのプレイの中でのPCの動きや話の流れは、あとから眺めてみれば感動的な昔話の英雄譚にもできます。
 私は、TRPGのプレイ中にプレイヤーが徹頭徹尾そんな感動的な英雄譚になるような演技をする必要はないし、「そうしなければ~」と重圧を感じてプレイしていてもつまらないだけだ、と思っています。
 どんなにバカ話になっていても、脳内で素早く感動的な物語に変換できればそれでいいと思うから。
 プレイ中は、一歩引いてわいわい楽しくやれるところが、TRPGの一番の良さなんじゃないか――と信じているのです。


で、リンク先のレポートをちょっと変換した例を上げてみようかと。
こんな感じですかね……。

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序 沼の女神

 これは昔の話だ。
 クンカァンが、まだ「ひとつのクンカァン」でなかったころの話。
 魔賊さえ従えた、かの偉大にして恐るべきクンカァンの大王、クルグランがこの地に生まれ出るよりもずっとずっと前のことだ。
 テガーナ高原に、「セルバン」という国があった。

 カナンの西の外れ。クンカァンの街道を、連れ立って歩く四人がいた。
 最も若いものでも齢三十を過ぎていたし、中には年寄りといっていいものもいる。だが、最年長の武辺者であるイノゴロが、この一行の頭というわけではなかった。
 もとからの仲間ではない。それぞれが一人旅で、道中なんとなく一緒になった仲だ。
 旅慣れた者たちにはよくあることだった。だから、四人とも互いに心を許しあってはいない。ただただ、荒々しいクンカァンを旅するのに、山賊やら、それと変わりないくらい乱暴なこの地の役人やらを相手にするのに、こうして寄り合っていただけだったのだ。
 年若い神人の女、シパンペン・ギィが、前を歩いていた三人の背中を見つめて、ふと、こう切り出すまでは――。
「みなさん、ここへ来るまでにおかしな夢を見ませんでしたか?」
「夢だって?」
 ぎくりとして振り返ったのは、傭兵だか侍だかだった男、ナ・ニーワだ。
「あんた、どうしてそんなことを聞くの?」
 女呪い師の ニーナが鋭い目を向ける。
 ギィは思わず目をそらした。ニーナは見た目が恐ろしい。顔と言わず身体といわず、常にちらちらと不気味な生き物のような影が這いずり回っている。それが傷なのか模様なのか入れ墨なのか、そのいずれでもないのか……全くわからない。彼女の話では「昔の呪いの代償」だそうだ。
 たしかに、ギィの《目》にも、その醜い影にムング(神)が絡んでいるようには見えなかった。だから自業自得の結果なのは間違いないだろう。
「夢か。俺は見た」
 年寄のイノゴロが答えた。
 六十を過ぎてはいるが、ただの老人ではない。どんな戦でも生き延びてきた歴戦の兵なのだ。争いになれば、誰よりも頼りになる。もし四人が野盗の大群に襲われたとしても、彼だけは間違いなく生き残るはずだった。
「おかしな夢だったな」
「もっと具体的に。どんな夢でした?」
「ふむ。話してもいいが……。その前にだな、女学士さん。どうして俺がおかしな夢を見たとわかったんだ? そいつを教えてくれ」
「それは……」
 ギィは自分の《目》のことを話した。
 神(ムング)の姿を見ることのできる目の話を。
 まだ彼女が若く、父の元で学士として勉学に励んでいた少女のころ、突然、ムングたちの姿が見えるようになった。
 その後、とある紙芝居師に何年も習ったおかげで、彼らの見え方を調節できるようになった。けれど。見ようと思えばいつでも見えるのだ。
 そして今、三人の頭には、虹の色をして細く長く伸びる「夢の神」の指先が入り込んでいるのが見えたのだ。
 指は、ギィ自身の頭からも伸びていた。四本の虹色の指は、ひとつにまとまって虚空へと伸び、薄れて消えている。
 夢の神の本体がどこにいるかはギィにもわからないし、この指から先の姿を見たこともない。たぶん、夢の神が近づいてきたら、眠りこんでしまうからだろう。
 寝ている他人を見ているときも、夢の神はやってこない。ただ、指だけが頭に伸びてくる。その指の色によって、夢の内容が違うとわかるだけだ。
「たぶん……なのですが、みなさん、会ったことのない少女が、濁流に飲まれ、流されていく夢をみたのではないかと……」
 ギィがそういうと、イノゴロだけでなく、他の二人も息を呑んだ。
「あんたも見たのか?」
「気味が悪いぜ」
「これは、なんの先触れだ? わかるのか?」
「さあ……。ただ、私たちは一緒になにかをするために導かれた。そんな気がします。この先も、ずっと……」
 ギィにも、それぐらいしかわからないのだ。
 先のことなど、誰にもわからないのだから。

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 ……とまあ、実際に文章でそれっぽく変換しだすとかなりの労力です。
 これって、レポートで言えば一番最初の、「同じ夢を見た四人が仲間になって歩いているよ」の部分だけですからね。
 逆に、四人で歩いているのは「同じ夢を見たから」という結果を、チャートでランダムに決定した瞬間、脳内では上の文章のようなことを思い浮かべているわけです。
 でも、べつにプレイ中にここまで求めてない~っていうか。
 この辺の感覚は脳内で感じ取るだけでOKで、さくさく進みたいっていうか。もちろん、色々な流派があるでしょうけど。

 という戯言でした。

テキストを読んでくださってありがとうございます。 サポートについてですが……。 有料のテキストをご購読頂けるだけで充分ありがたいのです。 ですので、是非そちらをお試しください。よろしくです。 ……とか言って、もしサポート頂けたら、嬉しすぎて小躍りしちゃいますが。