『ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん』を観てきた
登山ものも含め、寒冷地を舞台にした冒険小説や映画が大好きだ。
『北壁の死闘』とか『アラスカ戦線』とか、『遊星からの物体X』とか。
たぶん、スコットとかアムンゼンの南極探検を子どものころに夢中で読んでいたこととも関係あると思う。「ジャングル探検」や「砂漠の旅」の話も好きだけど、三つ物語があってどれを読むか……となったら、雪と氷が一番辛そうな気がしてしまうのだ。凍傷とか、考えただけでものすごく怖い。
だから、観光旅行とかならともかく、そうしたところへ実際に冒険に行こうとは思わない(私の寒冷地体験なんて、せいぜい長野県で数年暮らしていたぐらいでしかない)。登山もろくにしないし想像して楽しむだけだ。
でも、好きなんだなあ……。
帆船ものが大好きだ。
海軍ものよりは、海洋冒険ものや海賊ものなんかの「一隻でがんばる話」が特に好きだ。船が帆船じゃなくてもいいんだけど、できれば機関と半々だった頃のが好きだ。
実際にはヨットに乗ったことすらないけれど、これは明らかに『アーサー・ランサム全集』の影響だと思う。
こっちの「好き」はSFの宇宙船もの(アルカディア号やヤマトや、エンタープライズ号やコメット号や、ヘルヴァなどのせいだろうな)にも通じていることなんだけど、「様々な背景をもったクルーが特技や個性を持ち寄って航海していく」という、あの感じが好きなのだ。
意地っ張りな(でも実は優しい)女の子が一人でがんばるお話が好きだ。これはまあ、わかりやすいよね。
自分で書くお話も、けっこうそんなのばっかりだし。
この嗜好は、ムーミン辺りから見続けたアニメの「世界名作劇場」によってかなりの部分が作られたと言っていいと思う。
……で、『ロング・ウェイ・ノース』には、こうした私の好きな要素がみんな詰まっていたのだ。
81分って微妙な長さだけど、そこに本当に満足出来るほどググーッと「ああ、そういうの大好きだよ!」が詰まりまくっていたのだ。
しかも、それが絵本のような美しいアニメで表現される。もちろん、細部が緻密に描かれたリアルな動きのアニメーションだって好きだし見ていて「おおーっ」となるんだけど、なんだろう、これは響くとこが違うのだな。削ぎ落とされたとこを脳で再現して解釈しているというか。で、なんかそういうのを続けていると、別の感覚が生まれてくるというか……。
舞台は、北極海航路の開拓を勢力的に進めていた19世紀頃のロシア帝国。
探検家で海軍大尉でもあるお祖父さんに可愛がられて育った貴族の少女サーシャが、一年前に北極点を目指して旅立ち、新型の船ごと行方不明となった祖父の名誉のため、船の航路をたどって探索の旅に出る――。
貴族のお嬢さんの甘い考えでの家出だったのが、港町での挫折と親切な酒場の女将との出会いで逞しくなったりとか……。
船にかかった賞金と、航路を自分だけが知っていることを切り札に交渉して、頑固でぶっきらぼうだが凄腕の船長を口説き落として出港し、そこからの帆船ものや極寒地の冒険もので起こりうる、小さな「あるある」から、恐ろしくハードな状況(あの災難や、醜い仲間割れ、見捨てる見捨てない含む)までのオンパレードと、そして冒険の結末までの流れ……。
もうね……。
ベタなんだけどね……。
それがすごくいいの。
だって、そういうのが好きなんだもの。
船が流氷を割り始めたあたりからは、ずーっと身を乗り出して最後まで見入ってしまった。
一瞬、「え? これで終わり?」って思ったあとの、静止画による後日談がまたいいんだよね。
絶対にチビッコたちにも観て欲しい作品だよなあ。
あと、「よりもい」が好きな人にも響く作品だと思った。
だってさ、南北こそ逆だけど「北極に旅立って行方不明になった家族に会いにいく少女」の物語なんだよ。
しかも、200年近く前の装備で!
というわけで、かなりおすすめです。
DVD出たら買わなきゃ。
吹き替えしてるし、日本版も出るよね。
ていうか、出てくれ。
あとは細かい感想(あとで加筆するかも)。
多少のネタバレあり。
・幼少のサーシャの表現が「すきっ歯」なの、すごい可愛い。
・風が吹いて髪が乱れる、という表現の「揺れる一房の前髪」も素敵。
・シャックルの他に、もう一匹犬がいたよね。どうなったのかなあの犬は……。
・ん? ペニシリン? ま、まあいいか。
・船長と航海士の兄弟関係も、大事なラインなんだよなあ。
・お祖父さんの日記を読むのもお約束なんだけど、泣いちゃうよね。
・この後、サーシャはどうなるのかなあ~って考えちゃうよな。この時代のロシアで十四歳か。
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