フィクション日記『美紀』

プロポーズされた。

「僕が君を幸せにします。だから、僕と結婚してください!」

夜景の見えるレストラン、美味しい食事におめかしした2人。彼の手元には、ダイヤの指輪が輝いている。
教科書通り、満点のシチュエーションだった。
頬を紅潮させ、私の返事を待つ彼。

「お断りします。ごめんね。」

紅潮していた頬の色はみるみると白くなっていった。
彼に特に大きな不満はなかった。でも、

「僕が君を幸せにします。」

この一言に途轍も無い価値観の相違を覚えたのだ。些細なことだが、どうしても受け付けなかったのだ。

彼の思う「幸せ」と私の思う「幸せ」が同じではない可能性の中、彼の思う「幸せ」にされたところで私が幸せであるという保証はない。

私は、手っ取り早く幸せにされるのではなく、2人で同じ幸せを探したかったのだ。

私が捻くれているだけだろう。
でも、ごめんね。あなたの幸せにはなれない。
私は、

「一緒に幸せになろうね。」

が欲しかったの。

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