ブックオフの広告は、なぜ手の込んだ演出をしているのか。 1 いずみやすお | 本当に大切なことは、シンプルだ。 2020年10月12日 11:40 「ブックオフなのに、本ねぇじゃん」の広告で話題になったブックオフですが、当時は、本以外の商品の取り扱いをはじめたことで、このコピーを使用したわけですが、それが別の事態でも使われることになりました。コロナウィルス感染症の広がりで、売るための本そのものがなくなってしまったようで、「本を売ってほしい」という企画がスタートしています。1 この事例は、どこが優れているのか?この事例は、アイディアそのものだけでなく、ユーザーの心理を考えたことが成功要因だと思います。本を売るユーザーにとってみれば、ブックオフでもどこでもいいわけですがその「気持ち」をどうしたらブックオフに向けさせることができるか、というのがチャレンジだったでしょう。買取サービスでは「高価買取」が決まり文句ですが多くのユーザーにとって、この決まり文句は聞き飽きています。「高価買取」と言われただけで、それを鵜呑みにして行動するユーザーは、そう多くはないでしょう。では、何が買取店を選ぶ基準になるのか?この企画には、その答えが示されています。2 どうせ売るなら、の気持ち。本を売ろうかな、と思うとき、こまかく調べる人もいるかもしれませんが、多くの人は、なんとなく目に入ったお店、知っているところ、というのが現状ではないでしょうか。ブックオフでは、おそらく、そんなユーザーの気持ちや行動をもとにしたのではないか、と思います。この企画は、タレントでなく、ブックオフに勤務している店員さんたちが登場しています。長尺の動画をカットなしで撮影するため、NGが相次ぎ、タイトルスーパーによれば、23回も繰り返したそうです。仕事もあるのに、開店の時間も迫っているのに、それでも、頑張って自分たちの思いを伝えたい、という構成になっています。そんな店員さんたちの「姿勢」を見せることで、ユーザーの気持ちの中に、こんな変化が芽生えてこないでしょうか。「どうせ売るなら、ブックオフで売ってあげようか」企画である以上、このあたりを計算しているのですが一生懸命な店員さんたちの表情を見ていると、素直に「協力してあげようか」という気持ちになる人が多いのではないか、と思います。3 話題になれば、効果も期待できる。さらに、この動画は「面白いからツイートしよう」のような話題拡散していくことも設計されています。ペイドメドィアのリーチよりも、話題拡散のリーチのほうが爆発力がはるかに違います。また、共感をもって広まっているため、同じリーチでも単に「目に触れた」というリーチでなく、気持ちを動かす力をもったリーチともいえるでしょう。ちなみに、こうして僕もSNSで話題にしているわけですから、ブックオフの術中にはまっているのかもしれません。広告の事例は、企画の背景や考えを類推するとマーケティングの良い勉強になると思います。皆さんも気になる事例があったら、バックキャスティングしてみると面白い発見があると思います。 #動画 #マーケティング #SNS #広告 #クリエイティブ #アートディレクター 1 この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか? サポート