ブックオフの広告は、なぜ手の込んだ演出をしているのか。

「ブックオフなのに、本ねぇじゃん」の広告で話題になった
ブックオフですが、当時は、本以外の商品の取り扱いをはじめた
ことで、このコピーを使用したわけですが、それが別の事態でも
使われることになりました。

コロナウィルス感染症の広がりで、売るための本そのものが
なくなってしまったようで、「本を売ってほしい」という企画が
スタートしています。


1 この事例は、どこが優れているのか?

この事例は、アイディアそのものだけでなく、
ユーザーの心理を考えたことが成功要因だと思います。

本を売るユーザーにとってみれば、
ブックオフでもどこでもいいわけですが
その「気持ち」をどうしたらブックオフに向けさせる
ことができるか、というのがチャレンジだったでしょう。

買取サービスでは「高価買取」が決まり文句ですが
多くのユーザーにとって、この決まり文句は聞き飽きています。
「高価買取」と言われただけで、それを鵜呑みにして
行動するユーザーは、そう多くはないでしょう。

では、何が買取店を選ぶ基準になるのか?

この企画には、その答えが示されています。


2 どうせ売るなら、の気持ち。

本を売ろうかな、と思うとき、こまかく調べる人も
いるかもしれませんが、多くの人は、なんとなく目に入った
お店、知っているところ、というのが現状ではないでしょうか。

ブックオフでは、おそらく、そんなユーザーの気持ちや
行動をもとにしたのではないか、と思います。

この企画は、タレントでなく、ブックオフに勤務している
店員さんたちが登場しています。
長尺の動画をカットなしで撮影するため、NGが相次ぎ、
タイトルスーパーによれば、23回も繰り返したそうです。

仕事もあるのに、開店の時間も迫っているのに、
それでも、頑張って自分たちの思いを伝えたい、という
構成になっています。

そんな店員さんたちの「姿勢」を見せることで、
ユーザーの気持ちの中に、こんな変化が芽生えてこないでしょうか。

「どうせ売るなら、ブックオフで売ってあげようか」

企画である以上、このあたりを計算しているのですが
一生懸命な店員さんたちの表情を見ていると、
素直に「協力してあげようか」という気持ちになる人が
多いのではないか、と思います。


3 話題になれば、効果も期待できる。

さらに、この動画は「面白いからツイートしよう」のような
話題拡散していくことも設計されています。
ペイドメドィアのリーチよりも、話題拡散のリーチのほうが
爆発力がはるかに違います。
また、共感をもって広まっているため、同じリーチでも
単に「目に触れた」というリーチでなく、気持ちを動かす
力をもったリーチともいえるでしょう。

ちなみに、こうして僕もSNSで話題にしているわけ
ですから、ブックオフの術中にはまっているのかもしれません。



広告の事例は、企画の背景や考えを類推すると
マーケティングの良い勉強になると思います。

皆さんも気になる事例があったら、
バックキャスティングしてみると
面白い発見があると思います。

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