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鶴ニ乗リテ樗堂一茶両吟/初雪やの巻

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 しばし星ある春の山小屋
五里六里花の跡来る犬の声       樗堂

名ウ五句、桜の名所めぐりでしょうか。

     〇

五里六里 ごり、ろくり。御城下を一順できそうな距離ですね。

花の跡 はな・の・あと、あちこちの「花の名跡」。

来る くる、ついてくる。

犬の いぬ・の。

声 こゑ。いかにものんびりとした時代の空気が伝わります。

     〇

 しばし ほしある はるのやまごや

ごり ろくり はなのあとくる いぬのこゑ

ときを得て、花が咲けば、あちこちの名跡を求めて桜狩りに興じておりましたら、折からの陽気に浮かれたのか、先ほどから犬がついてきて、その声が聞こえてくるのです、と。

     〇

芭蕉に「風吹けば尾細うなる犬桜」がありましたが、この犬桜は、あまり見栄えはよくなかったようです。

むしろ、江戸時代には、伊勢参りをする犬もいたと評判になっていたそうですから、ここの花の句も、それなりに<おだやかな>時代の産物だったのでしょうね。

26.10.2023.Masafumi.

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