とくとくの水麦士一茶/梅の木のの巻
Berjaln-jalan, Cari angin.
02
梅の木の心しづかに青葉哉
家並なき山しりの春 麦士
脇、亭主をつとめた麦士の挨拶。
〇
家並 やなみ、軒を並べた城下の街並み。
なき 無き。市街地をはなれた処。
山しりの やま尻・の、野と山の際、山裾のこと。「の」で場所を明らかにしていたのです。
春 はる、ここにも「春」が、と。
〇
うめの
きの こゝろしづかに
あをばかな
やなみなきやましりの はる
亭主が「ささ、こちらへ」と案内した所は、松山でもやや奥まった山里でした。いかにも謙虚な応接でありながら、ずずいと客人を<内の中迄>通していたのです。並の句読みではこうはまいりません。麦士、なかなかの使い手のようです。
〇
松山で<奥>と云えば、道後を上った石手寺のあたり。
岩関か、あるいは東野のお茶屋までは行かないにしても、御城下の喧騒を離れたところにある清楚な佇まいに、客人・一茶を招き入れていたのです。
山しりの春、効いてますね。
5.11.2023.Masafumi.