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歌ヲ聞キ乍樗堂一茶両吟/降雪にの巻

En écoutant la chanson......
     09

 斧の聞ゆる山の名を 問ふ
在とだにしらぬばかりの御庵         一茶

初ウ三句、ほんとに知らなかったのかしら ?

     〇

在とだに あり・と・だに。「在り」は存在、「と」は格助詞、「だに」は副助詞。道綱母に「ありとだによそにても見む名にし負はば」と。

しらぬ 知らぬ。

ばかりの 許・の、「ばかり」は副助詞、「の」は格助詞。

御庵 おんいほり。庵は、世を過ごす仮の住まい。蝉丸大夫に「奥山に紅葉踏みわけ鳴く鹿の」がありました。

     〇

 おののきこゆる やまのなをとふ

ありとだに しらぬばかりの おんいほり

世情を避け奥山に住まう、そんな暮らしがあった時代に遡りながら、歌仙という文藝のなかで、<ありやなしや>の微妙な<存在>を確認しようとしていたのです。

     〇

万葉に

君が行き日長くなりぬ山たづの迎へを往かむ待つには待たじ  衣通王

と。(神話の恋ですから、激情がほとばしっているのです)

     〇

人の世だと

おのがねにつらき別れはありとだに思ひもしらで鳥や鳴くらむ 藻壁門院少将

この歌に

   大津にて智月といふ老尼のすみか
   を尋ねて 己が音の少将とかや
   老の後このあたり近く隠れ侍りし
   というふを

少将の尼の話や志賀の雪

と、こんな芭蕉の句がありました。

     〇

句に

恋ふたつレモンはうまく切れません    信子
逢ふことも過失のひとつ薄暑光       翔
枯野路に影かさなりて別れけり      久女

など。

29.10.2023.Masafufmi.

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