見出し画像

風早ハ兎文一茶両吟/門前やの巻

     28

厂かねに哀なる事思出し
 筑紫左遷の舷の露       一茶

名オ十句、瀬戸ゆく舟の嶋陰に、道真公の物語が遺されていたのです。

     〇

筑紫左遷の 昌泰四年(901)一月二十五日、右大臣菅原道真は、醍醐天皇の詔勅により太宰府への赴任を命じられました。

舷の露 舷はふなべり。その船旅や、さぞお辛かったことでしょう。舩の露は涙に、季は秋でした。

     〇

かりがねに あはれなることおもひだし

 ちくしさせんの ふなべりのつゆ

「哀なる事」に誘い出され、道真公の筑紫左遷のことを詠み、「舷の露」と付けていました。寛政年中、一茶の四国での拠点は讃岐の専念寺(観音寺市)でした。そのすぐ近くに、国府があり、若き日の道真の赴任地だったのです。しかも、西国紀行(寛政七年紀行)の記録された瀬戸内沿岸には、道真公に関わる伝承が数多く残されていたのです。

     〇

俳諧の連句に

其一

此梅に牛も初音と啼つべし         桃青
 ましてや蛙人間の作           信章
はる雨のかるうしやれたる世の中に      ヽ
 
其二

梅の風俳諧諸国にさかむなり        信章
 こちとうづれも此時の春         桃青
さやりんす霞のきぬの袖はえて        ヽ

延宝四年丙辰「江戸両吟」桃青は芭蕉、信章は素堂。
(菅神奉納の二百韵のうち、それぞれ三句を抄出)

     〇

梅は飛び桜は枯るゝ世の中に何とて松のつれなかるらん

文楽「菅原伝授手習鑑」

16.10.2023.Masafumi.

いいなと思ったら応援しよう!