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歌ヲ聞キ乍樗堂一茶両吟/降雪にの巻
En écoutant la chanson......
03
身はならはしぞ松かぜの冬
宵灯魚の油の曇して 樗堂
三句、宵の灯火に転じ「て」留めの三句。
〇
宵 よひ、いつしか暗い夜に。
灯 ともし、「灯火親しむ」の明かり。
魚の うを・の、ここで云う魚は鯨のこと。
油の あぶら・の、鯨油の。西鶴「好色一代女」に「とりまぜての高声に、鯨油の光のよしあし」と。
曇して くもり・して、品質の悪いものが多々あって、ふすぼって灯にならないこともあったのです。
〇
みは ならはしぞ まつかぜの ふゆ
よひともし うをのあぶらの くもりして
時を移し、場所も移して、灯火の世界に誘っていたのです。鯨油の燃え方が安定せず、ときおり、曇ることもあったのですが致し方なかったのです。加えて、匂いもあったようですね。
〇
絵歌仙に
百姓の羽織扇に立かゝり 宣麦
廿五間の鯨訴ふ 午長
うちくへる木の根枝葉のほつほつと 麦
宣麥編「繪哥仙」名ウ一、ニ、三句。
近代に
夜鳴雪翁を訪ふ
此夜立冬なりければ
秋をかたり冬をかたらん夜一夜 霽月
此句を立句として半歌仙を巻く
鯨油の灯はくさくとも 翁
歌反古の隙もる風にちらはりて 月
霽月「憂き旅」明治二十八年 半歌仙表発句、脇、第三句。
がありました。
27.10.2023.Masafumi.