
風早ハ兎文一茶両吟・門前やの巻
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初雪の七言対句おもしろく
居風呂を焚て尺八を吹く 兎文
名ウ二句、湯加減もよく旅の疲れが癒されます。
〇
居風呂 すゑ・ふろ、大釜を据えた五衛門風呂や、風呂桶に竃を取り付けた風呂など、家の中で入浴ができるようになっていたのです。
焚く 湯加減を見計らって、追い焚きもできました。
尺八を吹く 楽を添えてのおもてなし。
〇
はつゆきの ななごんついく おもしろく
すゑふろをたきて しやくはちをふく
七言に尺八をつけて、おもしろく見せていたのですが、この句の肝は「居風呂を焚く」にありました。
〇
風呂を据えた家は少なく、あったとしてもしょっちゅう風呂を湧かしてはいなかった時代のこと、旅人を持成すには、この上もないことだったのです。
また、近隣の家々で貰い風呂をする慣習も残されていました。
風呂あつくもてなす庵の野梅かな 蛇笏
据風呂や湯の漏れて居る萩がもと 碧梧桐
逢ひに来たその顔が風呂を焚いてゐた 放哉
短夜や気がねも無うて貰ひ風呂 木歩
茅花あかり貰ひ風呂から二人つれ 四明
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風早の事跡に、
奉寄進
善応寺浴室料所事
合壱町者
右件下地者下土居敷分根本如四至傍示悉為
寺家之計毎月六暦無懈怠為施諸人所奉寄附
之状如件
応永十一年二月廿三日 前対馬守通之(花押)
善応寺文書 二十六 5の12 河野通之寄進状 応永十一年(1404)
天皇が、浩宮徳仁親王と呼ばれていたころ(それは1982年3月のこと)、学習院大学の大石慎三郎教授とともに善応寺におこしになり、通之の寄進状にある「奉寄進 善応寺浴室料所事」に、いたく関心をお持ちになっていた、と伝えられていました。
14.10.2023.Masafumi