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樗堂一茶両吟/蓬生の巻 1


  蓬生蛙妻乞ふ小声哉          樗堂
 初折表一句、蓬生に蛙を詠んだ豫洲二畳庵の発句。

     〇

  蓬生
   よもぎふ。蓬は早春の艸、わが家を謙遜していう詞。源氏十五帖が「蓬生」。

  蛙
   蛙は絵に描かれ、連歌、俳諧に名吟を残していました。

  妻乞ふ
   つまこふ。妻戀。

  小声哉
   小さな聲でやさしくね。「哉留」で詠嘆と切れを。

     〇

 よもぎふのかはづつまこふ/ここゑかな
 寛政七年正月、樗堂一茶両吟/予州松山二畳庵の発句。矢羽勝幸は「蓬生の」と校訂し「の」を補っていました。「水流れ」「鴬の」に続く三巻目の歌仙。

     〇

 後の連句に、
  かはかはと蛙妻よぶ夜となりね    蓬里雨
   水草生ふる沼のそここゝ      東洋城
  春雷は隣の国へ行きぬけて      寅日子
 と。
◇「渋柿」(昭和五年十月)『東洋城全句集』下巻『寺田寅彦全集』第11巻

■画像は、浮世絵の蛙など。

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