風早ハ兎文一茶両吟/門前やの巻
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念此に素湯貰て吞す也
敷居見通す百畳の奥 兎文
初ウ十句、百畳は大袈裟だが、こんな大広間一体どこだろう。
〇
敷居 しきゐ⇔かもゐ、障子や襖などの溝がほられた引き戸の枠のこと、その下枠が敷居、上枠が鴨居。敷居を跨いで歩を進めるときには、敷居に足をかけてはいけないと教えられていました。慣用句に「敷居が高い」がありました。
見通す みとおす。「見通す」ほどの敷居とは、、、、
百畳の奥 百畳の大広間、それはもうお城でなければお目にかかることはできない、しかも並のお城ではない筈だ。
〇
ねんごろに/ さゆもらふてのみほすなり
しきゐ みとうすひやくじやうのおく
白湯の句に、百畳の奥の句へと、場面が大きく切り替わりました。付け筋をより理解するために、例えば、江戸時代に殿中で応接を職務としていた「茶坊主」のような人々のことを思い浮かべてみましょう。すると、その茶坊主が狂言回しの役を担い「百畳の奥」で繰り広げられた出来事を語りかけてくれるかも知れないのです。
〇
茶坊主は士の職務でした。
お勤めがお城の奥だったので知り得た情報も多く、それだけに慎み深い振る舞いと口の堅さが求められていたのですが、、、
蕪村の歌仙に
神無月はじめの頃ほひ 下野の国に執行して
遊行柳とかいへる古木の陰に
目前の景色を申出はべる
柳ちり清水かれ石ところどころに 蕪村
馬上の寒さ詩の吼る月 李井
茶坊主を貰ふて帰る追出シに 百万
歌仙「柳ちり」『反古ふすま』(柳ちりの句は「柳散清水涸石処々」と改められ『蕪村句集』に)
これを見ると、茶坊主にもいろいろな方々がいらっしたようですね。
〇
俳諧に
茶坊主に過きたるものや炭一俵 物外
狂句に
寒山が捨得きたる絵姿は医者でもあらず茶坊主てもなし 南畝
現代の川柳に
茶坊主に茶番茶々無茶茶よ怒れ 克己
茶坊主が尻尾でそっと答えてる 紅雷
評判は益々よろしくないのであります。
9.10.2023.Masafumi.
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