
風早ハ兎文一茶両吟/門前やの巻
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刎上る鯉の價の鰭付いて
男まさりに駈歩く哉 一茶
名オ六句、裾もあらわに、新しい女性の登場です。
〇
男まさりに をとこ・まさり、男以上の女性のこと。(これでいて、<男が上で女が下>の時代だったのですから)
駈歩く哉 駈はかけっこのかけ。「駈歩く」のを戒めていた浮世に、そこを承知でかけぬけていったのです。哉は詠嘆のことば。
〇
はねあがるこひのあたひのひれついて
をとこまさりに かけあるくかな
前句「鯉の價の鰭」に寄り着いて「駈歩く」と詠み、新しい女性の姿を句にしていたのです。新奇ながら、それはそれで、もててたようですよ。
〇
あらら 大股かっぴろげて
あの娘に惚れちまったんだって
もう居ても立っても、、、、
エイの鰭でもあるまいし!
〇
句に
山笑う少女ひらりと逆上り 雅子
吊橋に少女と跳ねて山の蝶 南畦
遊行忌に東少女は鮒を見に 兜太
など。
〇
門前やの巻 名残表一句~六句
春 真柴焚く伏屋の煙春深く 文
雜 今や朝飯の貝響くなる 茶
雑 相そりに噺の長き比丘尼共 文
雜 猶川留の雨にしあれは 茶
雜 刎上る鯉の價の鰭付いて 文
雜 男まさりに駈歩く哉 茶
14.10.2023.Masafumi.