風早ハ兎文一茶/交流始末
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◆兎文懐紙
阿堂のぬしを誘ひ 我病後の杖を曳くに
鳶ならで時雨に軽し病ミあがり 暁雨
宣来大人の 音つれを謝するに
芳宅を移されしを兼寿き侍りて
羨まし湯桁へまたぐ冬籠
◆一茶真筆「寛政八年中秋名月句稿」
樹下石上を栖となすハ 雲水斗敷の常ならなくに
今よひハ 諸風士と共に 蝸牛舎に会ス
人並に畳のうへの月見哉 むさしの旅人 阿堂
月見の茶にも友あればこそ 宣来
白浜の風を横きる雁落て 魚文
苞のしめりの状にうつれる 蘇郎
山折敷積重たる冬されに 宇好
餅搗く音の春を待声 蝶化
右一順
眺望
名月や燈見ゆる家も又 ア道
めい月や何所とも云はすさそふ友 ソ郎
明月や芦間にさはく舟の声 蝶化
月にけふおもへは永し秋一日 宇好
明月や下部ハこもる小雨かり 魚文
やつがれ遠祖の恵に ものゝふのものゝ敷に生れて
角ありといへとも 麟をあさふく才あらねば 人々
呼て 蝸牛庵と号く むへなる哉 ことしてゝ虫の
にしり入ことくの陋巷を もとめて
家買ふて肱を枕の月見哉 宣来
治世を諷ふ市中の秋 魚文
初あらし籠のうろくつ閑きに ソ郎
二ツ三ツ四ツ時鳥とふ 蝶化
人丸の雪と詠れし花咲は ア道
名もなき山もかすミ立らん 宇好
下略
れいの友とち酒肴携え 来たりて夜更ぬれば
ひち枕客にすゝめて月見哉 主人
寛政八のとし中穐三五夜
「小林一茶 寛政七年紀行 複製と解説」愛媛出版協会刊 1967
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暁雨は兎文、阿堂は一茶。風早の兎文邸に遺された文書を、愛媛大学教授和田茂樹が丹念に読み解いていました。
「風早ハ兎文一茶/交流始末」しばらくの間、短評を試みますので、おつきあいの程宜しくお願い申しあげます。
18.10.2023.Masafumi.
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