歌ヲ聞キ乍樗堂一茶両吟/降雪にの巻
En écoutant la chanson......
14
手合の薬のみ飽物おもひ
妾の指図の家建し月 樗堂
初ウ八句、うむ、なになに、月の定座に妾宅とや。
〇
妾の せふ・の、めかけ、てかけ。亭主に妻の存在がありながら、身の周りの世話をする別の女性のことをさす。
指図の さしづ・の、指図を受けるのは亭主の方。(妾は、妾で自立した女性であったことを示していたのです)
家建し いへ・たてし、場所も建坪も、調度も庭も、小さいけれど、それはそれで行き届いたものだったのでしょうね。
月 つき、そこに月が。
〇
てあはせの くすりのみあき ものおもひ
せうのさしずのいへたてし つき
ものおもひの末、ややあって、妾宅で見る月を詠んでいたのです。もとよりこれは、歌仙という文藝が描き出した幻影に過ぎないのですが、いやはや、何とも、樗堂こと廉屋の専助さん、ここまで云っちゃいましたかね。
〇
その経緯をば
◇「藪越や」の巻、名ウ一句、二句に
ぬらくらと番日怠る病あがり 樗堂
本取筋はけしきばむ頃 一茶
◇「初雪や」の巻、初ウ九句、十句に
虎吼る古き霊屋の秋の月 樗堂
霧吹はれて花紅葉ちる 一茶
◇「降雪に」の巻、初ウ七句、八句に
手合の薬のみ飽物おもひ 一茶
妾の指図の家建し月 樗堂
要らぬお節介が過ぎました。行く末々に差し障りがあってはなりませんので、これにて。
30.10.2023.Masafumi.
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?