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歌ヲ聞キ乍樗堂一茶両吟/降雪にの巻
En écoutant la chanson......
13
さくら残らず青葉也けり
手合の薬のみ飽物おもひ 一茶
初ウ七句、木の芽どきの気のやまいとか。
〇
手合の てあはせ・の、自家製の。
薬 くすり、自家薬籠中とも。
のみ飽 飲み・飽き、(どうも、薬がきかないらしいのです)
物おもひ もの・思ひ、思い悩むこと。兼盛に「ものや思ふと人の問ふまで」の歌が。(そりゃあ「ものもひ」に効く薬はありませんもの)
〇
さくらのこらず あをばなりけり
てあはせのくすりのみあき/ ものおもひ
あらゆる樹々が芽吹き青々とするころを「木の芽どき」と云いました。「この芽どき」は春の季語、民間伝承の「きの芽どき」は晩春から初夏を云い、この頃、こころのバランスを失い、沈みこんだり、妙に興奮したりするひとがいたのです。
〇
雑俳に
ぼんなうの垢若後家の木の芽時
句に
古傷がおのれ苛む木の芽時 きくの
木の芽時疲れを溜めて水輪見る 飛旅子
宿の灯や切々闇に芽吹くもの 哲雄
やり直し出来ると思ふ木の芽時 凡栽
手のひらの薬ふえたり木の芽時 喜久子
など。
29.10.2023.Masafumi.