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歌ヲ聞キ乍樗堂一茶両吟/降雪にの巻

En écoutant la chanson......
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 尾花にひゞく餅の音かな
木の端の枕一ツを借かねて         樗堂

名ウ一句、名残りの懐紙裏入りの一句。

     〇

木の端の枕 き・の・はし・の・まくら、「きのはし・の・まくら」で一語に。富太郎に「草を褥に木の根を枕花を恋して九十年」があるものの、この句は「木の根」ではなく、雑魚寝の枕のことです。

一ツ ひとつ・を、一本の丸太柱のような棒を枕にして、何人ものひとが、窮屈に寝ている様子をおもしろく描いていたのです。

借かねて かり・かねて、「私にも、どうか枕をお貸し下さいませ。」と云いかねている様。(後から、頭を入れると、先のひとの頭が枕からこぼれ落ちるので、遠慮しているのです)

     〇

 をばなに ひゞく もちの おとかな

きのはしのまくらひとつを/ かりかねて

前句<尾花の手枕>に、<雑魚寝の木の棒枕>を付けて、名残り裏入りの滑稽句としていたのです。木の棒枕は、四国遍路の宿坊などにもありましたが、もっぱら、渡り職人や漁師たちの飯場にあって、棒心や頭が棒枕をトンと叩けば数十人の男衆が一斉に飛び起きていたのです。

     〇

句に

返り咲く海棠一枝枕花        杏子
息白う訪うて雑寝の歌枕       麦草

小坊主の木枕に昼寝かな       冨女
枕から外れて秋の頭あり       橋石
棒に寝て田植衆らが畦枕       友二

などが。

2.11.2023.Masafumi.

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