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歌ヲ聞キ乍樗堂一茶両吟/降雪にの巻
En écoutant la chanson......
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雨晴の鹿子を撫るなら坂や
さくら残らず青葉也けり 一茶
初ウ六句、さつきなす青葉若葉の季節です。
〇
さくら 桜。
残らず のこらず、樹々の小枝は、一つ残さずいずれも、と。
青葉 あをば。
也けり なり・けり。なってしまったことだなあ、と。
〇
あまはれの かのこをなでる ならさかや
さくらのこらず あをばなりけれ
お日和が変わるのも、季節が移るのも早いものですね。あっという間もない勢いで、桜の樹々はみんな青葉若葉になって、五月の空に映えているのですから。
〇
連歌に
法楽
賦夢想連歌
遅さくら猶木高て葉も青し
花まち得たる松の藤なみ 道祇
春の夜の光をそふる月出て 教通
「大山祇神社連歌」文安二年 発句、脇、三句。
〇
俳諧に
京へきて息もつきあへず遅ざくら 太祇
ひるの月三輪の木の間の遅ざくら 大江丸
句に
雲霧にこずゑは見えず遅ざくら 蛇笏
夕せまる摩周湖あをし遅ざくら すえ女
など。
〇
降雪にの巻 初一句~七句
雜 詩の友と馬並べ行朝あらし 堂
雑 斧の聞ゆる山の名を問ふ 茶
雑 在とだにしらぬばかりの御庵 ゝ
夏 便ンなきわらは蜘棄に出て 堂
夏 雨晴の鹿子を撫るなら坂や ゝ
夏 さくら残らず青葉也けり 茶
29.10.2023.Masafumi.