とくとくの水麦士一茶/梅の木のの巻
Berjaln-jalan, Cari angin.
06
名月の半蔀淋し湯上りに
あらまし虫の撰さたまる 麦士
初オ六句、「定まる」と初折の懐紙を〆ていました。
〇
あらまし おおよそ、大体、概要。
虫の むし・の、野の虫もいれば、愛玩用に飼う虫もいる。
撰 えらび、好みを選別すること。
さたまる 決まった。
〇
めいげつの はしとみ さびし ゆあがりに
あらまし むしの えらび さだまる
髫、半蔀、虫とくれば、〆の句は源氏「鈴虫」。よい虫の「撰」と云いつつ、歌仙初折の六句の手合わせから、客人・一茶の読み筋をおおよそ判別させて貰いましたよ、と、亭主によって、その力量が評価されていたのです。
〇
秀歌は
おほかたの秋をば憂しと知りにしをふり捨てがたき鈴虫の声 女三宮
心もて草の宿りを厭へどもなほ鈴虫の声ぞふりせぬ 源氏
源氏物語「鈴虫」
梅の木のの巻 初オ一句~六句
春 梅の木の心しづかに青葉哉 一茶
春 家並なき山しりの春 麦士
春 夕かすミ御狩の狸背に負て 仝
雑 物かく髫髪いたき見る也 茶
月 秋 名月の半蔀淋し湯上りに 仝
秋 あらまし虫の撰さたまる 士
6.11.2023.Masafumi.