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風早ハ兎文一茶/交流始末
1-6
人並に(表六句)
山折敷積重たる冬されに
餅搗く音の春を待声 蝶化
〇
歌仙という文藝では、一の折を初表に6句、裏に12句。二の折を名残り表に12句、裏に6句。計36句で一巻としていました。
ここでも、六句読み進めまいりました。歌仙では、この六句を特に「表六句」と呼んでいたのです。
餅搗く音には
子どもたちばかりでなく
みんなの声が響き渡り、そりゃ大騒ぎ、春を待つ人々で賑わっていたのです。
「苞」「山折敷」「餅」と句材が連続していたとて、誰にとやかく云われる筋合いでもなく、一座して句を詠み合うことが、何より楽しいことだったのですから。
〇
句に
月代や晦日に近き餅の音 芭蕉
青かりし時より清し餅筵 蓼太
餅搗やうら若き手の艶をなす 嘯山
などが。
〇
人並に(表六句) 初一句~六句
月 秋 人並に畳のうへの月見哉 むさしの旅人 阿堂
秋 月見の茶にも友あればこそ 宣来
秋 白浜の風を横きる雁落て 魚文
雑 苞のしめりの状にうつれる 蘇郎
冬 山折敷積重たる冬されに 宇好
冬 餅搗く音の春を待声 蝶化
右一順
寛政八年八月、松山蝸牛庵でのことでした。
18.10.2023.Masafumi.