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風早ハ兎文一茶/交流始末

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  <名月発句>

  眺望
名月や燈見ゆる家も又         ア道
めい月や何所とも云はすさそふ友    ソ郎
明月や芦間にさはく舟の声       蝶化
月にけふおもへは永し秋一日      宇好
明月や下部ハこもる小雨かり      魚文

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蝸牛庵で行われた観月句会は、客人に<むさしの旅人)阿堂を迎え、松山の宣来、魚文、蘇郎、宇好、蝶化の六名が一座していました。

名月を題に発句を出し合い各々披露いたしました。それが、ここに記した五句です。(蝸牛庵亭主の宣来の句は、これを立句に歌仙を巻きましたので、そちらに譲りました)

   眺望
 名月や燈見ゆる家も又         ア道
題「眺望」と標し、やや高所、展望の利いた場所から詠んだ句であることを示しました。
 折からの名月の影に
 城下の家々の明かりを並置して
国榮之の寿ぎの祝言としたのです。

 めい月や何所とも云はすさそふ友    ソ郎
名月故、どこで会うとも
 誰を誘うとも
詳しいことは云ってはいなかったのに、いつしか、いつもの場所で、いつもの仲間がこうして集まっている事だなあ。

 明月や芦間にさはく舟の声       蝶化
松山は街中に荷上場が開かれ、市中に水路が開かれていました。
月とあらば芦間をかき分けて
 船足をさらに速めて
人々の集える處を目指し、あちこちから駆けつけていたのです。

 月にけふおもへは永し秋一日      宇好
月月に月見る月は多けれどとは云え
 今日の月こそ
長く久しく待ちわびていた「秋の一日」であったことよ。

 明月や下部ハこもる小雨かり      魚文
魚文の句は、寛政八年八月中秋の名月の天候をドキュメントしていました。
即ち、
空には月影が
地には「こもる小雨かり」が、まことに味わいのある夜であったことよ、と。 

18.10.2023.Masafumi.

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