鶴ニ乗リテ樗堂一茶両吟/初雪やの巻
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けふぞ得がたき法の春風
山ざくら盛砂ちらす朝もよひ 一茶
名ウ三句、貴人を迎える立砂を高く盛って、と。
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山ざくら やま桜。
盛砂 もりすな、貴人を迎える時に立砂を盛った名残りが、儀式化され地鎮祭などで見ることができます。
ちらす 散らす。散らさば整える。(整えておれば、散らされもするし崩れもする。)
朝もよひ あさ催、俊成は「あさもよひとはつとめて物くふ折をいふなり」と云ってはいたのですが、ここでは、朝の様子、あるいは朝の景色と云ったところでしょう。
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けふぞ えがたき
のりの はるかぜ
やまざくら/ もりすなちらすあさもよひ
春風に山桜、しかも貴人を迎える古風な慣習を詠み趣向を凝らしていたのです。粋筋などでは、盛塩の風俗を今に伝えているようですね。
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秀歌に
山ざくら我が見にくれば春霞峰にもをにも立ち隠しつつ よみ人しらず (「古今和歌集」春上 51)
俳諧の連句に
告て行御成の時の江戸さつま 遠舟
もり砂并にはうきの守迄 正察 (六日飛脚)
と。
24.10.2023.Masafumi.