歌ヲ聞キ乍樗堂一茶両吟/降雪やの巻
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春めく風呂の月しづか也
一里の田畠あらまし打じまひ 一茶
初オ五句、一里で「ひとさと」と読ませていました。
〇
一里の ひとさと・の。この邑の、この谷々のと、充足しきった<小宇宙>とでも。
田畠 た・はた。耕作地のこと。(江戸時代の課税地で、税率はとても高かったのです)
あらまし 副詞の「あらまし」、おおかた、おおよそ。
打じまひ うち・じまひ、打ち終ひ。春の田おこし、畠おこしが、あらかた終わった安堵感を表していました。
〇
はるめく ふろの
つきしづか なり
ひとさとのたはた あらましうちじまひ
「しづか也」に「打じまひ」と、安堵・充実感を句にして月の空き家を埋めていました。「一里の」措辞がよくきいた春の句でしたね。
〇
一茶に
田を打って弥々空の浅黄かな
「七番日記」
近代の句に
谷底に田打てる見えて一人なり 亜浪
水流れきて流れゆく田打かな 不器男
春田打つ鶴女房の村はづれ 朗人
母の忌や田を深く鋤き帰り来し 清子
春耕の老の休める鍬に寄り 五申
など。
27.10.2023.Masafumi.