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歌ヲ聞キ乍樗堂一茶両吟/降雪にの巻

En écoutant la chanson......
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 露にたゞ鳴レ三井寺の鐘
一風情雲おく花の嬉しさは         一茶

初ウ十一句、花の座に「雲おく花」を賞翫していました。

     〇

一風情 ひとふぜい、歌仙初折裏の花の座の祝言。

雲おく くも・置く、湖畔から見上げる山々にかかる雲。

花の はな・の、正花。

嬉しさは うれしさ・は、誠によろこばしいことであることよ、花こそは、と。

     〇

 つゆに たゞなれ みゐてらの かね

ひとふぜい/ くもおくはなのうれしさは

鐘の音から、山々に懸かる雲咲き誇る花を愛でた一茶の句。おそらく、琵琶湖の周辺で得た実感であったことでしょう。

     〇

前年
寛政七年十月興行の百吟に

冬牡丹末さかふべき先折れて     北花
 星祈るべう使たまはる       一茶
縁むすび白きが上の衣配       丈左

枯蓮に「百吟(未満)」重厚興行、義仲寺「時雨會」二折オ、七、八、九句。

が、ありました。(「一茶全集」には、「義仲寺へいそぎ候はつしぐれ」が記されていました。)

     〇

普通の詞で、眼前の景物を讃える、歌仙という文藝の極意のひとつだったのです。

30.10.2023.Masafumi.

余外ながら、芸能山城組で野外調査のお手伝いをしていたころのことです。
多くの先生方にご指導を賜っていたのですが、川喜多二郎先生は別格の存在でした。その先生の歌が山城組季刊誌「地球」に七首掲載されていました。

いたずらに澄みし湖水の知内浜哀しきまでに美しき日に
山門を入りてツツジのコレクション丹精誇りし僧のうれしさ
朝な夕な香ぐはしかりき赤子山の豪華絢爛新緑の日々
荒れ果てし百瀬川原のせせらぎはひぐらし騒ぎ日は傾きぬ
夏草を負ひし乙女は汗ぬぐひわが傍らに憩ひ求めぬ
朝まだき霜草踏みて分け入りし河内谷の秋深き淵瀬に
凍てつきし野宿を捨てて友と越えし三重ケ岳の雪深き春

川喜多二郎・山城祥二対談「文明の苦汁—―文化生態学のあけぼの――」芸能山城組季刊「地球」19 1979
いずれも、私はごいっしょすることはなかったのですが、琵琶湖湖畔の調査の折の作品でした。


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