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歌ヲ聞キ乍樗堂一茶両吟/降雪にの巻
En écoutant la chanson......
17
露にたゞ鳴レ三井寺の鐘
一風情雲おく花の嬉しさは 一茶
初ウ十一句、花の座に「雲おく花」を賞翫していました。
〇
一風情 ひとふぜい、歌仙初折裏の花の座の祝言。
雲おく くも・置く、湖畔から見上げる山々にかかる雲。
花の はな・の、正花。
嬉しさは うれしさ・は、誠によろこばしいことであることよ、花こそは、と。
〇
つゆに たゞなれ みゐてらの かね
ひとふぜい/ くもおくはなのうれしさは
鐘の音から、山々に懸かる雲咲き誇る花を愛でた一茶の句。おそらく、琵琶湖の周辺で得た実感であったことでしょう。
〇
前年
寛政七年十月興行の百吟に
冬牡丹末さかふべき先折れて 北花
星祈るべう使たまはる 一茶
縁むすび白きが上の衣配 丈左
枯蓮に「百吟(未満)」重厚興行、義仲寺「時雨會」二折オ、七、八、九句。
が、ありました。(「一茶全集」には、「義仲寺へいそぎ候はつしぐれ」が記されていました。)
〇
普通の詞で、眼前の景物を讃える、歌仙という文藝の極意のひとつだったのです。
30.10.2023.Masafumi.
余外ながら、芸能山城組で野外調査のお手伝いをしていたころのことです。
多くの先生方にご指導を賜っていたのですが、川喜多二郎先生は別格の存在でした。その先生の歌が山城組季刊誌「地球」に七首掲載されていました。
いたずらに澄みし湖水の知内浜哀しきまでに美しき日に
山門を入りてツツジのコレクション丹精誇りし僧のうれしさ
朝な夕な香ぐはしかりき赤子山の豪華絢爛新緑の日々
荒れ果てし百瀬川原のせせらぎはひぐらし騒ぎ日は傾きぬ
夏草を負ひし乙女は汗ぬぐひわが傍らに憩ひ求めぬ
朝まだき霜草踏みて分け入りし河内谷の秋深き淵瀬に
凍てつきし野宿を捨てて友と越えし三重ケ岳の雪深き春
川喜多二郎・山城祥二対談「文明の苦汁—―文化生態学のあけぼの――」芸能山城組季刊「地球」19 1979
いずれも、私はごいっしょすることはなかったのですが、琵琶湖湖畔の調査の折の作品でした。