歌ヲ聞キ乍樗堂一茶両吟/降雪にの巻
En écoutant la chanson......
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ちゝり烟たき寮の山風
款冬の五月さびしくかき曇 一茶
名オ七句、日々切々と哀切の情の駆け巡り。
〇
款冬の やまぶき・の、わざわざこの字をあてて、季移り。
五月 さつき、秋から夏へと。
さびしく 寂しく。
かき曇 かき・くもり、と。従って、泪もみせることもない。(直ぐに景に移し、情感をひきずらない)
〇
ちゝり けむたき れうの やまかぜ
やまぶきの/ さつきさびしくかきくもり
山風から山吹へ、やや唐突なと思わせる歌仙の運びは、実は、俳諧師一茶の仕掛けた<演出>だったのですね。通底音「寂しく」を響かせながら、月日をかけめぐらせていたのですから。
〇
この渇いた響きは
平付の句、四手、景気、心付、詞付、埋句、余情、相対、引違、隠題、本歌、本説、名所、異物、狂句。
二条良基「僻連抄」
さらに、
先師曰 発句は昔より様々替り侍れど 附句は三変にとどまれり むかしは附物を専とす 今は移り 響き 爾保比 位を以て附くるをよしとす 杜年曰 いかなる事を響き 匂ひ 移りといへるにや 去来曰 支考等あらましを書出せり 是を手にとりたるごとくにはいひがたし いま先師の評をあざけてさとさん 他はおしてしらるべし。
向井去来「去来抄」
と。
つまり、歌仙という文藝がみせる、多彩な技のひとつだったということなのでしょうか、ね。
1.11.2023.Masafumi.
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