見出し画像

歌ヲ聞キ乍樗堂一茶両吟/降雪にの巻

En écoutant la chanson......
     25

 ちゝり烟たき寮の山風 
款冬の五月さびしくかき曇         一茶

名オ七句、日々切々と哀切の情の駆け巡り。

     〇

款冬の やまぶき・の、わざわざこの字をあてて、季移り。

五月 さつき、秋から夏へと。

さびしく 寂しく。

かき曇 かき・くもり、と。従って、泪もみせることもない。(直ぐに景に移し、情感をひきずらない)

     〇

 ちゝり けむたき れうの やまかぜ

やまぶきの/ さつきさびしくかきくもり

山風から山吹へ、やや唐突なと思わせる歌仙の運びは、実は、俳諧師一茶の仕掛けた<演出>だったのですね。通底音「寂しく」を響かせながら、月日をかけめぐらせていたのですから。

     〇

この渇いた響きは

平付の句、四手、景気、心付、詞付、埋句、余情、相対、引違、隠題、本歌、本説、名所、異物、狂句。
二条良基「僻連抄」

さらに、

先師曰 発句は昔より様々替り侍れど 附句は三変にとどまれり むかしは附物を専とす 今は移り 響き 爾保比 位を以て附くるをよしとす 杜年曰 いかなる事を響き 匂ひ 移りといへるにや 去来曰 支考等あらましを書出せり 是を手にとりたるごとくにはいひがたし いま先師の評をあざけてさとさん 他はおしてしらるべし。
向井去来「去来抄」

と。

つまり、歌仙という文藝がみせる、多彩な技のひとつだったということなのでしょうか、ね。

1.11.2023.Masafumi.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?