仕切り直し樗堂一茶両吟/藪越やの巻
丗五
髫髪は節衣着かざりにけり 一茶
拳して辛きめ見する猫の妻 樗堂
名ウ五句、猫パンチ!猫の恋。
〇
拳して 拳。いつもは胸におさめているのだが、、、
辛きめ見する 辛き目を見す、ひどいめに合わせる。徒然草に「恨めしく我をば煮てからきめをみするものかな」と。
猫の妻 繁殖期の雌猫、春の季語。
〇
うなゐは
せちえ
きかざりにけり
こぶしして からきめみする ねこのつま
新春の風俗を、猫の恋に置き代え、少女に向ける男の振る舞いを制しつつ、妻の座の威厳をそれとなく示していたのです。
〇
うはなりねたみ(後妻嫉妬)
その神の嫡后須勢理毘売命いたく嫉妬し給ひき 古事記
あらあさましや六条御息所ほどの御身にて後妻打ちの御振る舞ひ 謡・葵上
敵より猶こはき女房 うはなりのいかり来にける其気色 俳諧犬子集
前妻が後妻をねたむこと、さらに女性の嫉妬を指していたのです。折口信夫に「嫉の話」『折口信夫全集ノート編』七巻がありました。
〇
猫の恋。歌、連歌には少なく、俳諧になってよく詠まれるようになり、芭蕉に、
猫の恋やむとき閨の朧月
またうどな犬ふみつけて猫の恋
麦飯にやつるる恋か猫の恋
猫の恋へついの崩れより通りけり
句に、
恋猫の眼ばかりに痩せにけり 漱石
淡雪や通ひ路細き猫の恋 寅彦
しばらくは恋猫の目となりてみむ 楸邨
恋猫に刃傷沙汰のありにけり 真砂女
などが。
21.9.2023.Masafumi.