鶴ニ乗リテ樗堂一茶両吟/初雪やの巻
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井一ツをもやひ長屋の薄月夜
娘やりたき星の陰言 樗堂
名オ十句、星月夜、隠し切れない隠し事。
〇
娘やりたき むすめ・やりたき、親心。
星の陰言 ほし・の・かげごと、星の影は、想いを寄せる二人の逢瀬をさす詞。(願い事も、陰言も、隠したところで皆々承知、だって同じ水汲む長屋だもの)
〇
ゐひとつを もやひながやの うすづきよ
むすめやりたき
ほしのかげごと
月夜に星を付けて、星月夜のなかで繰り広げられている世間噺を句にしていました。誰がどうしようとお構いなし、でもね、切った張ったは御免だよ。
〇
星合に
年をへてすむべき宿の池水は星合の影も面なれやなむ 長家
七夕のと渡る舟の梶の葉に幾秋書きつ露の玉章 俊成
など。
二句唱和に
殿上のをの子ども 桂川に逍遥し侍るけるに
夜に入りて帰るとて川を渡り侍るに 星の影
の水にうつりて見えければ
水底にうつれる星の影見れば 前大納言公任
と侍るに
天の戸わたる心地こそすれ 実方朝臣
『菟玖波集(下・巻十四)』
と。
〇
曾良「俳諧書留」に
直江津にて
文月や六日も常の夜には似ず はせを
露をのせたる桐の一葉 石塚喜衛門 左栗
蜑の小舟をはせ上る磯 曾良
<中略>
餞別
行月をとゞめかねたる兎哉 此竹
七夕や又も往還の水方深く 左栗
<中略>
七夕
荒海や佐渡に横たふ天河 翁
西濱
小鯛さす柳涼しや海士がつま 同
「おくの細道」余話。「星の影」は、文月の六日、七日の民俗伝承に深く関わっていたのです。
25.10.2023.Masafumi.