鶴ニ乗リテ樗堂一茶両吟/初雪やの巻
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売のこる菅菰捨し北時雨
煩ふ馬の薬問ひけり 樗堂
名オ八句、いけませんなぁ、こう冷えますと人も馬も。
〇
煩ふ わづらふ、病む。
馬の うま・の。農耕、運搬、軍馬、競走馬に。
薬 くすり、後の時代ながら、富山の売薬に「牛馬一方散」がありました。
問ひけり とひ・けり。問ふは、問求めること、けりで結末。
〇
うれのこるすがこもすてし/ きたしぐれ
わづらふ うまのくすり とひけり
季節の変化に耐えきれず馬の薬を求めました、と。かつて人々は牛馬一体で暮らしていたのですから、そりゃあ心配なことだったのです。
〇
後の世の歌ながら
供養塔
数多い馬塚の中に、ま新しい馬頭観
音の石塔姿の立つてゐるのは、あは
れである。又殆、峠毎に、旅死にの
墓がある。中には、業病の姿を家か
ら隠して、死ぬるまでの旅に出た人
のなどもある。
人も 馬も 道ゆきつかれ死にゝけり。旅寝
かさなるほどの かそけさ
道に死ぬる馬は、仏となりにけり。行きとゞ
まらむ旅ならなくに
邑山の松の木むらに、日はあたり ひそけき
かもよ。旅びとの墓
ひそかなる心をもりて をはりけむ。命のき
はに、言ふこともなく
ゆきつきて 道にたふるゝ生き物のかそけき
墓は、草つゝみたり
釈迢空「海やまのあひだ」
と。
25.10.2023.Masafumi.
余外ながら、わが家の先々代祖父文吉は売薬業を営んでいました。あいにく、牛馬の薬の記録はほとんどありませんでした。