ふじお(仮名)さんのこと
私には、気になるおじさんがいる。
ふじお(仮名)さんだ。
名前は知らないけど、心の中でこっそり「ふじおさん」と呼んでいる。
ふじお(仮名)さんは、見たところ、70歳ぐらい。
小太りで禿げている。
ふじお(仮名)さんは、声が良い。
つやつやの声なのだ。
ふじお(仮名)さんは、駐車場のおじさん。
駐車場の他のおじさんに比べて、品がいい。
ある日、私はバラを買って車に乗ろうとしたのだけど、
ふじお(仮名)さんが、「あー、きれいなバラ持ってますねー。
僕も実はお花の仕事を東京でやってて、月に3-4回東京に行ってたんだけど、コロナでダメになったのー。」と話しかけてきた。
よくよく話を聞くと、もともとは東京の人らしい。
黄色のよれよれのポロシャツを着ていながら、そこはかと漂う品の良さ。
オーライ!オーライ!とつやつやの声でこぶしを効かせながら、
誘導している時の立ち居振る舞いの優雅さ。
ぜったい、日本舞踊もたしなんでいるはずと、私はひそかに思っている。
あー、もう、めっちゃ興味ある。
そのうちふじお(仮名)さんの職場以外でばったり会う日が来たら、
その人生についてじっくり聴いてみたい。
ちなみに本日の私の感情のピークは、車から降りたときに
汗だくだくのふじお(仮名)さんが「超暑いね!」と話しかけてきた
瞬間だ。