すいかの匂いと夏休み

江國香織の『すいかの匂い』を読んだ。8月の読書1冊目。夏のお話。

読むと被っている体験はないのだけれど、出てくる単語とかそこから想像する風景から、自分の夏の記憶が蘇ってくる。読んだ人はきっと誰でも自分の夏休みを思い出すんだろうな、みたいな本。

私が思い出すのは特にタイに住んでいた小学生の頃の一時帰国。関西の空港で感じる、「やっと日本だ」みたいなちょっとした安心感とか、広くて古くてどこよりも日本の家感のある奈良のおばあちゃん家。畳の部屋、その隣にある廊下に囲まれた庭、玄関から門までの長くて日本らしい敷石の道。蝉の声。

タイはずっと夏なのだから夏休みも冬休みも春休みも特に違いはなかったのかもしれない。でも夏休みに日本に帰って、短い間ではあるけれど四季のうちの限られた日本の夏を体験した時間が貴重で、それが私の中で夏休みを代表する思い出になったんだろうな。

とにかく夏休みは日本に帰れるってだけで特別だった。奈良のおばあちゃん家を出発したらそのまま熊本のおばあちゃん家へ行って旅行気分が続いたし、日本のお店で日本のものを買えるのがすごく楽しみで、ただのショッピングモールとか路面店のユニクロとかでウキウキしてた。フリシャーと、安っぽいプラスチックの髪留め、音符のついた筆箱、鉛筆を買ってもらって大切に使った。自動販売機のアイスクリームとか近所のお祭りのかき氷とか、タイで感じるのとはまた別の日本の夏。

本を読み終わって話をちゃんと理解できたと言えるかはわからないけれど、こんなふうに忘れかけていた風景を思い出させてくれるのは読書のいいところだよなぁ。

いつか小学生くらいの子供を連れて実家に行くっていうのやりたいな。うちには畳の部屋がないんだよなぁ。畳の部屋いいよね、、、。