小説「たべもののおいしいところ」
お正月映画を1人で観に行った。人は何故斯くも世界を荒廃させるのが好きなんだろうかと思いながら1人で観ていた。強大な悪によって世界は荒廃していた。勇敢な青年は世界を救うべく立ち上がる。これだけ描いたら、当てはまる作品が何本あるかな、ってタイプの話だ。人は世界を荒廃させることが好きだ。いや、違うな、荒廃した世界を救ったり、その中でたくましく生きていくのが好きなのだ。たくましく生きていく分には構わない。だがそのためにカラスやもぐらまで一緒にに荒廃させるのはどうかなあと私は思って、サンドイッチ食べながら観ていた。荒廃した世界だから当然美味しそうな食べ物は出てこない。小麦を砕いた薄いお粥のようなものを、分けあって飲んでいるシーンがあったくらい。思った。食べ物が美味しかったら、戦争なんて起こらない。しかし、思った。食べ物が美味しいところがあるから、戦争が起こる。不味い物を食べている人が旨いものを食べている人に戦いを挑む。世界は荒廃する。その直前に、美味しい物を、少しくらいなら食べられる。そして、また旨いものを探して戦争が起こる。実にそういう事なんだよなあ。玉子サラダのサンドイッチは、とても美味しい。だから、いずれ戦争は起きるだろう。