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#読書の秋2022におすすめしたい日本推理作家協会
20世紀の頃、SNSがなかった時代。その頃週刊誌や文学誌は文壇にとってのSNSのように機能していた。様々な作家がエッセイという名の下に他の作家やその作品を批判したり、悪口を書いたり、更にその反論が掲載されたり、ほっこりする裏話から意外な素顔など、文学界の人間関係が作家たちの原稿を通して透けて見えてくる、読者たちはお金を払ってそうした雑誌を買って、外から眺めて楽しんでいたのだった。
近年そうした文壇おもしろ読み物みたいなコラムやエッセイを見かけなくなり、作家たちもSNSアカウントから発信するようになったものの、文壇場外乱闘みたいな場面を見ることもなく、せいぜい作家の失言で一般人に燃やされる程度が関の山、そんなものは見ていて楽しいものではない。なにしろ一般人という防刃ベストに身を包んだ無数の人々が憂さ晴らしに正義をふりかざして群がっていくだけなのだし、せめて舌鋒鋭くそれなりに面白いことを書くならまだしも、2Dの正論程度のつまらないものがやってきては消えていくを繰り返すだけ。SNS時代になって、タダで読めるものは増えたけどその分、お金を払ってでも読みたい面白い小咄は姿を消してしまった。そんな風に思っていた時、たまたまこの本に出会った。
本が売れなくなったと言われて久しいこの時代、日本推理作家協会もご多聞にもれず記念祝賀の企画の規模を小さくせざるを得ず、何もしないよりはせめて会員が寄稿したエッセイを本にまとめて出版しようということで出来上がったのかこの本だという。そんな景気の悪い話のわりに、中身の充実度は凄まじい。寄稿した作家は50人以上(数えるのが嫌になる程の大人数なのでそこは割愛します)、それぞれがなにげなく書くエピソードに絡まる他の作家像がいちいち「へ〜」と言いたくなるような意外な一面だったりする。その「へ〜」を見つけるためにひたすら読み進め、あっという間に読み終わってしまった。
唯川恵さん寄稿の一部。「えええ」って話なんだけど、この後のエピソードがとても素敵で、そこまで引用しようとしたら上限超えてますエラーが出たのでここまで⊂((・x・))⊃ https://t.co/sFpkSZzFh1 pic.twitter.com/heJPdsUI6a
— 栗原泉Izumi Kurihara (@izumillion) June 17, 2021
他にも、北方謙三さんの寄稿部分も興味深かったが、理事を務める作家陣のイケメンぶりがあちらこちらの寄稿文より出土する。そしてこんな寄稿もある。
山口雅也氏寄稿の一部。こうゆうエピソードを読むとニヤニヤしてしまうのでやっぱり私はゲスい⊂((・x・))⊃ https://t.co/gf5EmQoVME pic.twitter.com/AbqSA2F4dq
— 栗原泉Izumi Kurihara (@izumillion) June 17, 2021
昔はいろんな週刊誌で見られた、文壇場外乱闘だ!と思うとニヤニヤが止まらない。こういうのが読めるなら毎年発行してほしいと思わずにはいられない。
引用制限の関係でこれ以上は引用は出来ないが、意外な作家同士の交友関係とか、ある種の先輩後輩的上下関係だったりとか、「へ〜」の連続なのである。寄稿した作家の人数がすごいので、その中にはきっと、読んだことのある作家、好きな作家が含まれてるはず。そしてこのエッセイから、読んでみたくなる作家もきっと発見できると思う。
今日の1曲
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