マジで多様化してきた北米の音楽シーン
今日のコーチェラでいちばん楽しみにしていたのは北米進出を果たしたAngèleのライブ配信を観ること。音源を聴く機会はあってもフランスを拠点にするアーティストのライブって中々観る機会がない。
Angèleはフランス人だと思っていたらMCでベルギー人と言っていた。ベルギーはフランスの隣の小国で、ベルギー人の北米進出は中々の快挙だと思う。音は普通に、フレンチ・ポップスの中でもトレンドを明確に意識したポップ・ミュージックである。
アートワークやミュージック・ビデオを見ているとクセの強さというか、個性的なセンスを感じるがライブを実際に見てみると、ダンサーを複数連れて露出度の高い衣装で歌い踊る、正統派のディーヴァ系であり、金髪美人なのだ。
フレンチ・ポップスは古いものから新しいものまで、私は好きだが独特の個性が確立されているため、フランス以外では英語圏だとずっと苦戦してきた。Angèleが突出した、英語圏にアピールする要素があるかというと実はそうでもない。ただ、英国出身で北米でも成功を収めているデュア・リパとのデュエット曲がシングル・カットされて北米でもそれなりにかかったのがきっかけになっての今回のコーチェラ出演だったのだと思う。
ライブ自体は、モハビ・テントという、第三の小さなステージでありつつも、背景に映像演出も用意し、ダンサー・チームも配したきちんとしたもので、前半は最新曲から中心にプレイし、後半にデュア・リパとのデュエットシングル"Fever"や代表曲である"Balance Ton Quoi"を持ってきていた。裏のメインステージがゴリラズという状況下でわざわざ集まってるオーディエンスにとっては"Balance Ton Quoi"はお馴染みの曲で、場内大合唱となった。多分普段からフレンチ・ポップスを聴いてるリスナー層だとは思うが、会場内に集まった人数を考えたらフランス人ばっかりとは思えない。それなりに米国人も多数集まっていたと思われる。
K-POPの北米進出が成功してBTSは絶大な人気を博し、Black Pinkは明日のコーチェラのヘッドライナーにもなっている。日本からもPerfumeやきゃりーぱみゅぱみゅが過去にコーチェラ出演を果たしている。それを考えるとAngèleのコーチェラ進出も不思議ではない。全編非英語のポップ・ミュージックで歌い踊る。それはJ-POPのきゃりーちゃんやPerfumeと同じだし、MCに関しては日本人よりもずっと流暢な英語で話し、オーディエンスとのインタラクションも積極的だった。
しかし今までのフレンチ・ポップスのシンガーたちは、どれだけフランス国内で人気を得ても、ヒット曲を出しても、中々北米進出は果たせなかったし、たまにNYCでフランスのアーティストのライブが観られてもそれは完全に在米フランス人向けというか、観にくるのもフランス人ばっかり、MCも当たり前のようにずーっとフランス語だから何を言ってるのか私にはわからない状態の、フランスでライブを観ているような錯覚に囚われるほど、会場内がフランス化するものばかりだった。それが遂に、外国語音痴の米国人が外国語の音楽を受け入れ始めたんだという実感が、今日のAngèleのライブで確信となった。
音楽が買われなくなったミュージシャンに厳しい時代と言われてきたけれども、昔だったら北米進出ってどこの国からでもそうそう出来るものではなかったのが、この時代の変化でどこの国からでもやろうと思えば出来るものになってきている。今の若い世代はいい時代に生まれた、ラッキーな世代かもしれない。