新選組展2022に行ってきた
昨日、京都文化博物館まで「新選組展2022」を見に行ってきた。
全国旅行支援の影響なのか、単に行楽の季節だからか、館内は結構な賑わいであった。
展示されているもののほとんどが書状などということもあり、なかなか列が進まず、特別展の3、4階を見終わるまで実に2時間も用した。
新選組の政治的活動に主眼を置いて、というテーマのようで、前述のとおり書状が大量に展示されていた。
大学時代に授業で江戸時代の変態仮名は習ったものの大半忘れてるし、当然ながら古文書は読めないので、まぁなんとなく雰囲気を感じてきただけなのだが、非常にボリュームがあって見応えがあった。
見てきた中で、印象に残っているのが3つある。
一つ目は、近藤勇が斬首され三条河原に晒し首になったことを書いた瓦版。
数種類展示されていて、それぞれの絵の描き方を見ていると、不思議と、初めてまざまざと現実が想像できたのだ。
何度も本などで見たことがある瓦版も1枚あったが、今までそれを見ても全然ピンと来ていなかった。
これは意図的に情けない表情で描写した可能性があるらしい。
旧幕府軍側の立場から描いたものは、意図的に凛々しい表情にしてある可能性があるそうだが、顔の輪郭などが写真で見た近藤勇の雰囲気に近かった。
色々な表現をされているのを見て、初めて、現実味を帯びて受け取れた。
そしてすっかり気にしていなかったけど、三条大橋、京都市内出た時はそこそこ良く渡るのだ。
ああ、今の今まで場所まではリアルに想像していなかったな。
洛中はあちらこちらに歴史が刻まれている。
意識を向けすぎればその闇に喰われてしまいそうな恐怖が少しだけある。
二つ目は、土方歳三の写真(の複製、先週までは本物が展示されていたそうだ)である。
これは、様々な場所で使われている、とても有名な写真で、洋装に総髪撫付姿のものだ。
私が見たものは複製とはいえ精密なレプリカ。
実際はこんなに小さいのか、と驚いた。
そして、書籍など紙に印刷されたものよりも、リアリティを感じることができた。
もちろん、叶うことなら現物を拝見したかったが。
写真を見ながら「もし目の前に居たらどんな人だったのだろうな」と想像した時、全く意識していなかったが、大河ドラマ「新選組!」の土方歳三役・山本耕史の姿が脳裏に映った。
というかもう、映像とはいえ表情や動きを鮮やかに捉えられた山本耕史のイメージが強すぎて、それしか見えなかった。
ちなみにこの大河ドラマは初めの10話くらいしか見ていない。
土方歳三と山本耕史、顔つきの雰囲気が似ているのだろうか。
配役発表時もネット界隈では適役だと盛り上がっていたような気がする。
特別に山本耕史のファンとかでもないのに、自分の頭にまざまざと浮かんできて、もうずっと頭の中が山本耕史で、山本耕史だらけすぎて、思わず「山本耕史すごいな!!」と内心で叫ばずにはいられなかった。
三つ目は、展示会の目玉であると思われる、土方歳三の佩刀、和泉守兼定。
レプリカではなく本物である。
この展覧会で、刀はのべ5振ほど展示されていたと思う。
孝明天皇から誰かに下賜されたものなどがあったように記憶している。
中にはとんでもなく精巧な梅や鳥の拵えがされたものもあった。
でも、和泉守兼定は、他の刀に比べて圧倒的に存在感があった。
目玉なので、展示の仕方や照明の当て方などが他と違っている可能性もある。
私には、ガラスの向こうから静かに静かにその存在を主張する佇まいから、他の刀との違いを感じられたのである。
何故だろうかと考えた時、一つ想像したのが、その刀への思い入れが他のものより強かったのではなかろうか。
どれも大切にされて現代まで伝えられたお品ではあるが、褒賞に与えられて大切にされたきたものと、生き死にの場面をくぐり抜ける相方として大切にされてきたもの、大変な戦況の中にあって遺族へ渡すために必死で守り伝えられたものとは、少し種類が違うのではないだろうか。
そんな風に感じたのあった。
今回の展示、公文書のような性質のものも多かったが、新選組隊士が故郷の郷士に宛てた手紙も多く、瓦版や覚書のようなものを見るにつけ、江戸時代の広い識字率の高さを感じずにはいられなかった。
もっと時代が古いと資料自体が少なく、大抵が為政者か僧侶や神官が書いたものである。
紙も貴重で、丁寧に書き連ねられているものが多いが、今回は手紙なども多く、汚いとかはないが、勢いや緊迫感、力強さ、様々な筆致を感じた。
また、資料の膨大さに圧倒された。
娯楽的におもしろいかと言われると少し難しいかもしれないが、非常に興味深い展覧会であった。
新選組関連の書籍をたくさん読んだ時期もあったのである程度は認識していたが、近藤勇らの政治活動の活発さ、政治的な存在である新選組像を改めて知れて興味深かった。
青春群像みたいなイメージだけではない、新選組上層部の人たちのリアルな生き様を垣間見れたような気がする。
見に行けて良かった。
(敬称略)