
10.ほんの少しの不安
仕事終わりにレンのお店に寄るのが習慣になってきたころ
少しだけ不安になっていた。
私とレンは、仕事終わりにデートするだけの関係なんだろうか、、、
それだけで終わり??
私って、お店が開くまでの間繋ぎみたいな、そんな感じ??
「私とレンって、こうやっていつもいつも、ただお店で会って時間になったらバイバイ って、それだけ??」
って、怒り気味に彼に言ってみた事がある。
何度かデートをした、仕事帰りに毎日でも会ってる、キスもした。
でも、「付き合おう」みたいな、はっきりと明確に私と彼の関係を定義付けるような、そんなやりとりはしていない。
でも、そんなのもういいや って。
今のこの、「好き」で、それだけでいいや って、思う事にしたのに。
少しの不安がどんどん積もっていって、グルグル考えていた頃。
いつも通り、仕事終わりでレンのお店に寄った日
「今日は、店は休みにする」
と、レンが言いだして。
なんでだろう??って思ってリアクションできずに居たら彼が
「普通のカップルみたいに、デートとか、したいって言ってただろ」
と、言ってくれて。
その日は二人で、ドライブして、ご飯を食べに行った。
特別な場所に行ったわけじゃないし、ご飯なんてどこにでもあるようなファミレスに行っただけだったけど。
そんな、普通の事がとっても嬉しかった。
そのあと、彼と初めて抱き合った。

いつもの彼は優しくて。私が仕事のストレスでイライラしていても
否定も肯定もすることなく、ただそれを聞いてくれていて。
そんな、ただ優しいだけの彼に見ていたのだけど。
抱き合っている間はいつもより少しだけ強引で、普段とのGAPがさらに素敵だなと思った。
そういえば今までずっと、こんな風に、普通の当たり前の日常を、彼氏と過ごした事って、多分なかったような気がする。
でもだからって、レンから「俺たち、付き合おうか」みたいな、そんなやり取りは相変わらず、交わされることはなくて。
私達は確実に、お互いの日常に2人の時間が当たり前にあるのだけど、関係を定義付けるようなやりとりは交わされる事がなくて。
でも、なんとなくそれでもいいやと、思えていた。
私達付き合っている
なんて、そんな共通認識をお互いに持っているのがベストだとは思ったけど。過去の恋愛を振り返ってみると、そんな共通認識を持っているからって2人の関係が確かなものである保障なんて、どこにもなかったから。
私は彼と毎日会いたい、彼はそんな価値観じゃない。みたいなズレによって、「私達付き合っている」という、共通認識を持っている相手とでさえ、レンとの関係みたいに日常に2人の時間がある関係を作れた事はなかった。
だからこそ、「付き合おう」という言葉を交わしているかどうか?についてはそんなに拘ってはいなかった。少し不安はあったけど。。