3.指先で送るメッセージ
関西に戻る頃には、季節は春らしく、暖かくなっていた。
いつもの通勤途中の桜の木についた花が、今にも咲こうとしていて。
去年は、アノ人と桜見に行ったな〜なんてことを考えながら過ごしていました。ただ一つだけ、それまでと違うのは、毎日毎日、レンとやりとりしていた事。
朝起きて「おはよう」
通勤電車の中から「仕事行ってくる〜」
休憩時間に「お腹空いた〜」
なんてやりとりを、相変わらずしていて。
レンと私は、お互いの顔も声も知らない。
知ってるのは、メアドだけ。
お互いの共通認識が少なすぎて、地元を離れたらもうやりとりしなくなるのだと思っていて。
普通、そうだと思う。
でも現実は、日常に戻ってからも毎日レンとやり取りをしていたのです。
その年の桜は、女友達と見に行って、その写真をレンに送ったりして。
距離は離れていても毎日お互いの日常をシェアし合って関係を深めていました。
そういえば、年明け早々に振られた、友達以上恋人未満の状態でキープされていたの前の彼のことなんて、この頃にはすっかり考えなくなっていました。