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10.挨拶
彼が両親へ挨拶にくる日。
そういえば数年前、元彼が両親に挨拶に来た事があったっけ。あの時はそれ以降だんだん連絡頻度が落ちていって、それ以降音信不通。
今回もまた同じ事が起きるんじゃないか?
って、少しだけ不安だった。
その日はかなり久しぶりに大輔と休みが揃った日で、日中はデートをして夕方私の実家に行く予定。久しぶりのデートだったけど、実家への挨拶が控えてたから、手土産を買いに行ったりしていて、デートだけを楽しめる感じではなかった。
日中はランチしたり手土産を選んだりして、その後私の部屋で少しゆっくりして実家へ向かうスケジュールにしていた。
プロポーズされたものの、全く実感がなかったのが、大輔と二人で実家へ行く準備をしていて少しずつ現実味が増してきた。
大輔と実家へ行くと、なんだか雰囲気が違っていて。
いつも当たり前に出入りしていた実家なのにこの日は、いつもガランとして何も置いていない和室にテーブルと座布団が用意されていた。
私と大輔は和室に通されて、両親とテーブルを挟んで座る事に。
「はじめまして」みたいな、当たり障りのない挨拶から始まって。私と付き合っている事、自分はまもなく転勤で県外に引っ越す事、大輔の家族の事、一通り話した後に大輔から、
本日は娘さんと、結婚させて頂きたく、ご挨拶に伺いました。
と、はっきり言ってくれた。
結婚の挨拶って、こんな感じなんだ。と、この時やっと現実の事として私自身もちゃんと解釈する事ができた。
この時初めて、私の婚活は終わったのだと、はっきり認識した。
両親の反応は、アラフォーの娘が持ってきた結婚話しに今更反対なんてするはずがなく。「よろしく願いします」みたいな事を言っていた。
挨拶の後、この日は私の実家で晩御飯を食べて2人で自宅に戻った。
元カレを実家に連れて行った時と決定的に違うのは、実家に挨拶に来た後も朝まで一緒に居た事。
前回とは全く違う道を、私は進んでいるのだと実感できて幸せだった。
大輔はまもなく県外に引っ越しをして、私も1か月後に追いかける予定。結婚するとはいえ、少しだけ遠距離になってしまう事に不安を感じながらも、二人で居る時間を大切に過ごしていた。