5.好き なのかもしれない
レンとの初対面を果たした後も、私はいつも通り関西で生活していて、
それまで通りレンとのやり取りも続いていた。
この頃、私は毎年夏に海外旅行に行っていて。
この年の行き先はベニス。
旅行の日も当然、離陸直前まで彼とやり取りをしていてベニスに着いてからも、Wi-Fi環境では常に彼とやりとりをしていて。
「今から飛行機に乗る」
「いまイタリアについた、これから電車でベニスに移動する」
「ベニスについた」
「ホテルにチェックインした」
みたいな、旅中ずーっと彼と逐一やりとりをしていて。
彼も仕事の合間に、いちいちリアクションしてくれていて。
このぐらいの時期からなんとなく感じていた。
私は、彼のことが好きなのかもしれない と。
好きになったところで、彼とは住む場所が違いすぎて会いたい時にすぐ会うことができない。
前カレとは、会いたくなったら電車ですぐ会いに行ける距離なのにそれができなかった。
そんな寂しい思いはもうしたくないと思っていたから、物理的な距離のある人を好きになる事にブレーキをかけていたのだけど。
そんな迷いなんて一瞬で吹っ飛ぶ出来事があった。
今考えたらあまりにも単純すぎる。
イタリアから帰国する日と私の誕生日がたまたま重なっていて。帰国して携帯を見たら彼からメールがきていた。
「ハッピーバースデー○○ちゃん!アイラブ○○ちゃん」
と、きていた。
本気なんだかノリなんだかよく分からないテキストで、
だからってスルーできなくって。
この頃から確実に、「好き」になっちゃいそうだけどどうなんだろう。
って、彼の言葉の端々をいちいち気にして、好きになっても良いかどうか?を見定めるようになっていた。
でもそんなもの、冷静な判断なんて当然できるはずがない。
だってもう、ブレーキを掛けようとする時点でそれは 結構好き になっているから。
30過ぎて次の恋愛は結婚に繋がるものであって欲しいと願うと同時に、「結婚できそうな人」を判断基準にすることができなくて、当時の私にとっては何よりも、「好き」が大事だった。