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貴船神社
年末の帰省を利用して、一泊二日の京都旅行をしました。
その際、貴船神社を参拝しました。
貴船神社は、貴船山の麓にある本宮、奥宮、結社の三社から成っています。
叡山電車の貴船口で下車し、さらにそこから2キロほど山を登った先にあります。
縁結びの神様は全国各地にありますが、この貴船神社の結社は別名「恋の宮」と呼ばれています。
なぜ、そう呼ばれるようになったのかを辿ると、この結社の御祭神 磐長姫(いわながひめ)と、和泉式部に行き着きます。
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一年の終わりに、和泉式部伝説の色濃い場所を訪ねて、恋について思いを馳せる時間 ーーー
また、この和泉式部という女性のおかげで、今年一年が飛躍の年になったご報告とお礼をしたく、参拝させて頂きました。
磐長姫(いわながひめ)
先ほどお伝えした、結社「恋の宮」の御祭神である磐長姫という神様をご存じでしょうか。
この神様は、『古事記』『日本書紀』の記紀神話(2作品の総称)に登場する女性の神様です。
神武天皇(初代天皇とされる伝説上の天皇)の曽祖父邇々芸命(ににぎのみこと)が、磐長姫の妹である木花開耶姫(このはなさくやびめ)を好きになってしまい、父である大山津見神(おおやまつみのかみ)に結婚の申し出をしたところ、父神は大喜びし、姉である磐長姫を添えて多くの結納品と一緒に邇々芸命へ差し出しました。
しかし、邇々芸命は磐長姫の容姿が醜いことを理由に拒否して、磐長姫を送り返します。
磐長姫は、岩のように永久の命を持つことからその名が付けられ、一方で妹の木花開耶姫は桜の花のような美の象徴と短命に由来しています。
邇々芸命に拒絶された磐長姫は、そのことを恥じ、自分のような思いを誰にもさせまいと、永遠の命をかけて人と人とを結ぶことを祈ったという話が、結社のルーツです。
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和泉式部伝説
この磐長姫の伝説を信じた、ひとりの女性がいます。
「恋多き女」として著名な平安時代の歌人和泉式部です。
和泉式部が、2番目の夫 藤原保昌の心変わりに悩んでいた時期、なんとか夫の心を取り戻そうと貴船詣でをしたのです。
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貴船川の沢辺に飛び交う蛍を見た和泉式部は、
もの思へば沢の蛍もわが身より
あくがれ出づる魂かとぞ見る
思い悩んでいると、貴船川一面に飛ぶ蛍が見える。
その蛍は、まるで私の身から抜け出した魂
のようです。
と詠じます。
この歌を詠んだ後、貴船明神から返歌がありました。
おく山にたぎりて落つる滝つ瀬の
玉ちるばかりものな思ひそ
奥山に激しく落ちて滝に飛び散る水玉のように、
心を千々に乱して、そんなに悩んではいけません
貴船明神は、和泉式部の恋煩いを慰めてくれたという話です。
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その後、夫である保昌の心が戻り、この話は貴船神社の和泉式部伝説となります。
その後、この貴船神社は「恋の宮」というエッセンスが強くなっていきます。
「孤悲(こひ)」する磐長姫
初回の記事で、「恋」=「孤り悲しむもの」と認識されていた古代人の恋の発想をご紹介しました。
その「孤り悲しむ」という恋を踏まえるなら、磐長姫こそ、容姿がもとで男性から見捨てられた、悲しい運命を辿った女性と言えます。
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「恋する恋する恋する古典」と冠して古典のイベントを企画し、「恋」をキーワードに活動している者として、「恋の宮」として謂れの深い貴船神社への参拝は、とても意味のある経験でした。
また、「恋とは何か」というお話をご紹介させて頂く際には、この磐長姫の伝説をまずさせて頂こうと思っています。
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貴船神社へ辿り着くまで、急流の川沿いを歩きました。
「水の神様」としても知られる貴船神社への道、川音がBGMとなり、文字通り「禊ぎ」のような効果を与えてくれたように感じています。
「恋」(孤悲)を知り、人と人とを結ぶ場所
そんな古典サロンの未来が見えた気がします。
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貴船神社で購入した絵馬に書く願いが決まりました。
目標が決まれば、それが叶うよう段階を踏まえて、目の前の取り組みを着実に実行していくのみです。
貴船神社。
ぜひまた来年の終わりに参拝させて頂こうと思っています。
お読み頂きありがとうございました。