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【映画】ここまで凝ってるなら、カラスを出して欲しかった 『犬が島』

先週に引き続き、ウェス・アンダーソン監督作品を家族で見た。

この映画が作られたのが2018年。当時の映画評を見ると、日本映画へのオマージュだとか、ポリティカル・コレクトネス(他国人の文化をテーマにした作品を作ることの是非)などが書かれているけど、今見ると、これは全然違う印象の映画となるだろう。

といのは、この映画の主体が「(犬による)感染症」であるからだ。犬インフルエンザが犬の間に流行り、それが人にも感染するという事態に至り、犬をゴミ捨て場「犬が島」(東京の夢の島みたい)に隔離し、さらには絶滅させようとする、という話。

その感染症の元となる病原菌は、実は犬を滅ぼそうという目的を持つ一団によって開発され、ばら撒かれていた。

実は犬インフルエンザはすでに科学者によって治療薬が開発されているにも関わらず、権力者によって握りつぶされ、科学者は暗殺され、メディアは権力者側に完全に立ち、軍部も共同し・・・。

それに対して、「犬を絶滅させようとする陰謀から今のような事態になっている」と訴える高校生「陰謀論派」がいて、ハッキング等をして政権を引っ繰り返そうとしている・・・。

なんか、色々な点で、現状とイメージが重なりすぎて、「あれ、あれ?」となるのである。4年前に作ったんだよね? コロナ始まってからじゃないよね? ウェス・アンダーソン監督のコロナ観を表しているわけじゃないんだよね・・・・・もちろん、違うのだ。

でも、出てくるセリフや、対立構造が現在の世界の様子にどこか似ていて、見ていてもぞもぞっとしてしまう。

最後には、12歳の少年アタリが飼い犬を探すために「犬が島」にひとり乗り込み、犬たちと立ち上がって戦い(ここで黒澤明監督の『七人の侍』のテーマ音楽がかかり、気分が盛り上がる)、最後にはめでたしめでたし、なのだけど、そこに至るまでの風刺がとてもシャープなんだな、と今になって良くわかる。

ビジュアル面では、ウェス・アンダーソン監督が「日本のこと勉強してるなあ!」と思わせることが山ほど。日本をテーマにしていても、「いや、それ違うだろ」という映画は沢山あるけど、これは日本文化をリスペクトしてくれてるな、と感じさせる、懲りまくった作品だった。

ただ、ここまで凝るなら、ストーリー内で結構大きな役割を果たす「フクロウ」が出てくるんだけど、これは「カラス」にして欲しかったなあ。できたら3本足の八咫烏(ヤタガラス)に。

そうしたら、神の使い=解決への糸口という役割をもっと果たせたのに、とそれだけが残念。

宗教色を入れたくなかった? んー、相撲も太鼓も、言って見れば神技だから、せっかくヤタガラスにぴったりの役があるのに、残念だったな、と細かいところで、ひとりブツブツ文句を言っていたのだった。




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