見出し画像

不動産業界の縦割り構造とその影響

住宅と言うと、何を思い浮かべますか?素敵なマンション?それとも広い一戸建て?あるいは、コンパクトなアパート?住宅には多様な種類があり、それぞれに魅力があります。また、新築か中古か、中古でも築年数が新しいか古いかなど、様々な種別が存在します。しかし、これらの様々な選択肢がある中で、消費者であるお客様が自然と選択肢を絞られてしまっている事実をご存知でしょうか?

私が現在の不動産取引において重要な課題だと感じていることの一つになりますが、新築中古、マンション戸建てなどの不動産取引の全ての不動産業者が縦割りになっているという現状です。縦割りとは、各分野が独立しており、それぞれが特化しているということです。

まだ分かりづらいですか?

では、お家を探そうとした時に、皆様はどのようにお家探しをしますか?大半の方々はインターネットを利用するでしょう。その中でも、SUUMOさんは非常に人気のあるサイトです。

例えば、新築マンションを購入したいと思い、SUUMOさんで内見予約をしたとしましょう。土日のお休みにご家族で実物を観に行くことにします。モデルルームはきらびやかで、営業マンの接客も丁寧です。しかし、その物件を勧めるばかりで、他の物件を紹介してくれることはないでしょう。その理由は何でしょうか?

これが、不動産業界の慣習による縦割りの弊害です。新築マンションを販売している営業マンは、そのマンションの販売に特化しているため、中古のマンションや一戸建ての情報を提供することはありません。他で言えば、住宅展示会で販売しているハウスメーカーの営業マンにも同じことが言えますが、自社物件での販売以外に関しては力を入れない方針です。

その逆もまた然りです。中古マンションを販売している不動産仲介会社が新築マンションやハウスメーカーの物件を紹介することはできません。こちらはしたくても出来ないと言った方が正しいかもしれません。

このように、新築マンション、ハウスメーカー、中古マンション、新築中古一戸建てなど、それぞれの物件ごとに専門の営業マンが存在しています。
そして、マンションの営業マンは一戸建ての詳細については知識が乏しく、一戸建ての営業マンも同様にマンションについては無知なことが多いです。

不動産取引の縦割りの慣習について分かったけど、それはお客様にどんな影響があるの?となると思います。しかし、自分で考えて行動すれば良いのですが、不動産取引が初めての方にはそれはなかなかのハードルになります。

例えば、このような中で働く営業マンたちがどのようなセールストークをするか、今回の情報を基に想像してみてください。

当たり前ですが、営業マンは自分が扱っている物件については肯定的になりますし、扱わない物件種別については否定的に語ります。時には他の物件種別を潰す程のコメントをする営業マンもいるでしょう。彼らは自分の成績に直接影響を与えるので、営業マンとしての自然な反応かと思いますが、成果バイアスのかかった台詞になるということです。

その結果としてお客様が耳にする情報は、営業マンの個々の事情やバイアスが混ざったものになります。ハウスメーカーと建売住宅の違いも分からない純粋無垢なお客様にしてみると、この情報を正面から信じるしかありません。

残念ながら、お客様にとって最善の情報ではないという事実があります。

忖度なく申し上げますと、お客様一人一人にとって最適な物件種別は異なります。十人十色です。そのため、相談する窓口の不動産屋選びは大変重要になるのですが、オールマイティーに応えられる不動産営業マンは少ないのと成果バイアスを取り除いて、真っ直ぐにアドバイスできる人は皆無と言って良いでしょう。

そういった事情を踏まえると、住宅選びをする際には、複数の業者や情報源を活用し、お客様自身で比較検討する必要があるのですが、そんな時間や労力を考えると、楽しいはずのお家探しが苦痛に変わってしまいます。そんなことはあってはいけませんし、このお客様の苦労を考えると、この部分にビジネスチャンスがあると思いませんか。

私は、ここに不動産仲介ビジネスの未来があると感じています。業界の慣習なんてお客様には関係ありません。住宅業界が手を合わせて、お客様に本当の意味での価値を提供できる未来を願っていますし、忖度なく説明できる営業マンを育てたいと思っています。

今回は、不動産取引における仲介ビジネスの慣習について説明しました。次回は「新築マンションと仲介、その仕事内容について」詳しくご紹介します。


いいなと思ったら応援しよう!